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先行き不透明なブログ?(仮題)

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歯科

------------------------------ソフトの紹介------------------------------

リンクが切れている場合、記載しているURLをコピペして飛んでみて下さい(リンククッションを挟んでいるので、利用しているリンククッションが無くなっている場合、飛べなくなるのです)

 お待たせしました!……って、待ってた人がいるかどうかは分かりませんが、やっと歯科について書きたかった記事が完成しました。歯科については、悩んでいる人も多いので、私に見えるところ、見えないところで反応が大きかったりしそうなので、出来るだけ細かく書いたつもりです(最近、アクセス解析を見ていて、私のブログの過去記事から引用しているサイトを見つけました。内容を修正したい場所を引用されてたので困っちゃいました。こっそり修正しましたが。爆)。ただ、その分、すんごい長文になってます(笑)。それでも「ちゃんと読まない人が誤解・批判とかするんだろうな」と思ったりもします……まぁ、いいや……。
 書きたいことを全部書こうとしたら、書くのがすんごい難しくて、時間がかかり、大部分が書き上がった記事が何かの不具合でおかしくなるなど(結局は元に戻りましたが)、何度も何度もモチベーションを落としながら書き上げました(爆)。でも、書きたかった記事なんですよね……。少々、私には荷が重かったですが(笑)。「ここ間違ってるよ」なんて箇所があれば、こっそり教えて下さい(爆)。




↓この「ぴよたん@おしゃべりインコ」シリーズは1~17まであります。ぴよたん可愛過ぎ~。


 まずはフリーソフトの紹介です。
 マウス・カーソルが2つあったら便利だと思いませんか?。思わないですか?。でも、作業によっては、使ってみるとスゲー便利なんです(「作業によっては」ですよ)。起動するだけで使えるインストール不要(レジストリ不使用)のソフトで、不具合を起こしにくいと思いますので、一度、使ってみて下さい(マウスホイールをクリックするとアクティブなカーソルが入れ替わります)。

マウス兄弟 http://onjn.nomaki.jp/

 誤ってファイルを削除してしまったことはありませんか?。ゴミ箱に入れただけなら元に戻せば元通りですが、ゴミ箱から削除してしまった……でも必要だった……そんな時、どうしますか?……そんな時のためのソフトを2本紹介します。

DataRecovery http://www.forest.impress.co.jp/lib/sys/file/delundel/datarecovery.html

Recuva http://www.forest.impress.co.jp/article/2007/08/21/recuva.html

Recuvaのダウンロード先
http://www.recuva.com/
ダウンロード先のURLの「Download Recuva → Alternative Download」をクリックすればOKです。

 1本目の「DataRecovery」は、起動するだけで使えるインストール不要(レジストリ不使用)のソフトですが、2本目の「Recuva」はインストールが必要なソフトです。おまけに外国製ソフトですが完全日本語対応ソフトなので問題なく使えると思います。ただ「DataRecovery」は、ソフト終了時に「Yahoo!ツールバーをインストールするか?」「JWordプラグインをインストールするか?」「Kingsoft Internet Securty Uをダウンロードするか?」を訊いてきますので、よく考えて対応して下さい(私はオススメしません。チェックを全部外して「次回からこのダイアログを表示しない」にチェックして「OK」をクリックするのが良いと思います。ちなみに、私は「JWord」はスパイウェアだと勝手に思ってます)。
 以前、私も誤って、ファイルが大量に入ったフォルダを削除してしまったことがありました(「Shiftキー」を押しながらゴミ箱に入れてしまいました)。その時、この2本のソフトに救われました。まずはインストール不要の「DataRecovery」を使いました。大部分のファイルを救出できたのですが、一部、復元できないファイルがあり「Recuva」をインストールしました。これで全てのファイルの復元に成功しました。こう言うと「Recuva」の方が高性能のように聞こえそうですが、実際には「DataRecovery」で復元できたファイルが「Recuva」で復元できなかったり、その逆もあったりで「得意・不得意」があるようです。まずはインストール不要の「DataRecovery」を試してみて、ダメなら「Recuva」を試してみるのがオススメです。
 ファイル救出ソフトには、恐ろしく時間がかかるソフトも少なくないですが、この2本は激速なのでオススメです。注意しなければならないことは「ファイル復元の際は、ファイルが存在していたドライブとは別のドライブに復元した方が良い」ということです。というのも、ファイルを復元する際、復元したいファイルの上に上書きしてしまうことがあるからで「上書きしてしまったら、復元できたはずのファイルも復元できなくなる」ということなのです。
 私は使ったことはありませんが「Glary Undelete http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/01/10/glaryundelete.html」も良さげです(要インストール)。

 ここまで書いてきて、ふと思ったのですが、ファイルの解凍ソフトを紹介したことがなかったですね(笑。ファイル解凍ソフトは全て「要インストール」です)。
 ファイルの解凍ソフトのイチオシは「Lhaplus http://www7a.biglobe.ne.jp/~schezo/」です。他のソフトならエラーで解凍できない「破損ファイル」でも強引に解凍してしまえる強引さがオススメです(笑)。もちろん程度問題で、破損がひどいものは解凍できませんが。
 ただ、ケースによっては「Lhaz http://www.vector.co.jp/vpack/browse/pickup/pw5/pw005588.html」の方が良いこともあります。
 変り種では「アーカイブX http://www.vector.co.jp/vpack/browse/pickup/pw5/pw005987.html」もオススメです(開発終了ソフトなんですが)。通常、LZHファイルなどは、解凍しなければ中を見ることができませんが、圧縮ファイルをフォルダと同じ感覚で扱えるようにしてしまうシェル拡張ソフトです。
 「ふん、信用できん解凍ソフトなんかいらん。多くのファイルはWindowsXPで普通に扱えるZIPだし、日本国内ではLZHファイルも多いけど、そんな圧縮形式のものは相手にしない」というツワモノは、マイクロソフト純正の「LZHFLDR」は、いかがでしょうか?。本来、WindowsXPでは中を見られないLZHファイルの中を見られるようになります(参考(解説)リンクhttp://www.vector.co.jp/magazine/spotlight/050530/sl0505301.html)。

 ちなみに、私は全部インストールしてます(笑)。どれか1つ挙げるとすれば「Lhaplus」ですね。
 使ったことはありませんが「ALZip http://www.vector.co.jp/vpack/browse/pickup/pw7/pw007062.html」も良さげです(破損ファイルを強引に開く機能もあるようです)。
 また、インストーラーでも解凍できてしまう(すげ~)「UniExtract」というソフトもあり、このソフトにはインストールせずに使える「Noinst」タイプもあるのですが、日本語表示はされず「プログラムフォルダのことを理解している人でないとダメかな」とも思うので名前だけ紹介しておきます。

 今回の記事作りで使ったソフトも紹介しておきましょう。今回、記事を書くのに使ったのは「タブ式MDIテキストエディタ Ginnie Free Editionhttp://ginnie.kntware.net/free/」と「アウトラインプロセッサ AUTLAhttp://www.forest.impress.co.jp/article/2007/06/15/autla.html」です。考え方をまとめるのに使ったのは「AUTLA」で、書くのに使ったのは「Ginnie」です。「AUTLA」はデータベース作りにも役立つと思いますし、「Ginnie」は、まだマイナーなソフトですが、いいソフトだと思います。「MDIタイプ(複数のウィンドウを同時表示するタイプ)」のエディタって意外と少ないから貴重なんですよね。有名なエディタ「TeraPad」はMDI化するツールもあるけどイマイチじゃないですか?(笑)。なんでMDIタイプのエディタって少ないんですかねぇ……便利なのに……どちらもレジストリ不使用のソフトなので使ってみてはいかがでしょうか?
 あと、PDFを見るのに「PDF-Viewerhttp://www.forest.impress.co.jp/article/2007/06/19/pdfxchanview.html」を使いました。PDFと言えば、重~い「Adobe Reader」を使っている方が多いと思いますが、ハッキリいって、あんな重いソフトはサッサとアンインストールすべきだと思います(爆)。フリーのPDFリーダーとしては「Foxit Reader」が有名ですが、ハッキリ言って「PDF-Viewer」の方が高機能・多機能な上に軽いです。外国製ソフトですが、ほとんどが日本語化されていますので問題なく使えると思います。少し前までは不具合があったので「Foxit Reader」を使ってましたが、今回使ってみると不具合が修正されていたので「PDF-Viewer」に乗り換えました(笑。これはインストールして使うソフトです)。

 さらにさらに、今回はゲームの御紹介……久しぶりにゲームをしてみたら面白かったので(笑)……シューティングゲームの「the one casehttp://www.forest.impress.co.jp/article/2009/04/24/theonecase.html」と、パズルゲーム系の「23:58http://www.forest.impress.co.jp/article/2009/06/04/2358.html」です。どちらもキーボードだけで遊べますし、インストールする必要がなく、起動するだけで使えるので、システムに致命的な問題を起こす可能性は低く、つまらなかったら、すぐにゴミ箱へ入れればOKなので試してみてはいかがでしょうか?(ちなみに、the one caseの私の最高得点はスタンダードモード521923点でした。初代のファミコン以降、ほとんどゲームをしたことがない私でも楽しめましたが、スタンダードモードしかクリアできな~い。笑)。

 フリーウェアのお約束……万一、紹介したソフトで問題・不利益が発生しても、当方は一切責任を負えないので自己責任で御使用下さい

 以上、ソフトの紹介でした。

続きは↓の「続きを読む」をクリックして下さい(長文なので重いです)。



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 ●目次●

虫歯
歯科治療
歯周病
最後に

------------------------------虫歯------------------------------

 植物には加熱しなければ食べられないものが少なからずあります。日本人には馴染み深い「大豆」にも消化阻害物質などの植物性自然毒が含まれています(ほとんどの豆には毒性があります)。でも、ヒトは火を利用することで、これら、生では毒を持つものを食べられるようになりました。つまり、食べられるものが増えることによって、摂取できる栄養素が増えました(加熱調理は体外消化なのです)。
 また、固くて食べられなかったものも、加熱することで軟らかくなるので、強靭な顎が必要なくなり、顎の筋肉が減って頭部への圧力が減少し、脳が巨大化して猿人から原人へと進化しました(直接的には、顎の筋肉の減少には「MYH16」遺伝子が関与しているとされます。余談ですが「大昔の人間に歯周病や虫歯はなかった」などというのは誤りで、猿人にすら歯周病が確認されているようです。虫歯については糖の関与が大きいので、糖を口にする機会がなかった大昔は少なかったかも知れませんが、古代エジプトでは紀元前3000年には歯ブラシの原型「チュースティック」、紀元前1500年には歯磨き剤が存在したようです。入れ歯も、部分入れ歯は紀元前2500年頃の古代エジプト、総入れ歯は16世紀の日本で尼僧が使用していた木製総の物が見つかっているようです(「織田信長の気性の激しさは虫歯が原因」という説もあります)。日本の木製入れ歯は仏師が作った物のようですが、古代エジプトでは歯科医療が行われていたようです(日本では701年の「大宝律令」で「耳目口歯科」が確立されたのが歯科の始まりのようです)。
 「野生動物に虫歯はない」とも言われますが、元々、加熱しない食べ物は歯垢の生成を助けにくいことや(特に炭水化物は加熱によって粘性が増す)、糖や酸の摂取が少ないことなどの環境要因が大きい上、乳歯から永久歯へ、1度しか生え変わりのない人間(二生歯性。親知らずは一生歯性)と違って「歯の生え変わり回数が多い動物もいる」といった生物学的要因など、色々な理由で虫歯が問題になることは少ないのです(肉食の野生動物の場合、表面が滑らかな円錐形の歯が多く、歯間が広いために歯の間に食べ物が挟まったりすることが少ないことなども理由として挙げられるでしょう。歯間の狭い小型犬は大型犬より虫歯になりやすいです)。文明的生活は虫歯の大きな要因です。人類は「加熱」を手に入れたことによって、巨大な頭脳を獲得すると同時に、虫歯も獲得してしまったのかも知れません。

※……野生動物の歯について補足しておきます。魚類、両生類、爬虫類は何度も歯が生え変わる「多生歯性」です。草食動物の場合、多くは、磨り減ったら埋もれていた歯が出てくる「長冠歯型」、馬や牛などの歯も長期に亘って伸び続ける「高冠歯型」です。古い歯が前に押し出されて新しい歯が生えてくる「水平交換」と呼ばれる生え替わりをするゾウの歯は「常生歯(無根歯)」で、一生の間に6回程度の生え替わりをします。

 ギネスブックに「最も多い病気」として載っているのは「歯周病」だそうです。人類の進化に大きく関わり、最も多い病気を抱える場所でありながら、往々にして、口というのは、あまり重視されません。でも、歯と歯周病の問題は全身に関わってくるのです。そこで、今回は歯と歯周病について取り上げたいと思います。

 私達は、出来ることなら治療を不要とする身体でいたいと思いますが、どうしても避けられないことが多々あり「避けられない治療」の代表的なものの1つが歯科治療だと思います。
 患者は「良い治療を受けたい」と願うものですが、何が「良い治療」なのでしょうか?。「技術力のある医師の治療」が「良い治療」であろうことは当然として、様々な治療法がある中での「良い治療」とは何なのでしょうか?。「どの治療法が良い治療法か?」を問うには「どの治療法が自分に合っているか?」ということを考えなければならないということではないでしょうか?。
 つまり「良い治療」が意味するものには「医師の腕の良し悪し」以外に「自分が何を求めるのか?」が大きく関わってくることになります。「自分が何を求めるか?」を考えるにしても「現実的にありえないもの」を求めても仕方が無いので、まずは「歯科」のことを知らなければなりません。
 歯科医は自分の信ずるところの主張・治療を行っていて「あれは間違っている。これが正しいのだ」と、自説を正しいものとし、他説を間違っているとするので1人の医師の話だけを聞いていても歯科界の全体像を把握することは出来ません。歯科医たちは各々の価値観の違いによって様々な主張・治療法を選び、それを「良いもの」として私達に勧めてきますが、何も知らない私達は歯科医の主張をそのまま聞いてしまっていることが殆どだと思います。
 本来、出来るだけ多くの人の話を聞くことが大事ですが、多くの話を聞いたり読んだりするのは、なかなか難しいですし、あまりにも主張が違い過ぎて混乱をきたすことが少なくありません。そんな中「歯科」を俯瞰した中立的な話を聞くことが出来れば良いのですが、なかなかそうはいきません(以上のことは、歯科に限らず、どんな分野でも同じだと思いますが)。そこで、私自身が学んだことをまとめ、混乱を整理して歯科知識の基礎をまとめようと思ったのです(あくまで「基礎」なので、より高度なことは、以下の知識を土台にして各自で調べて欲しいと思います)。
 整体師にとって、やはり歯科は専門外なので「僭越だ」とする向きもあろうかとは思います。私は歯科治療まで手がけるつもりはありませんが、やはり、身体の一部である「歯」について、どう考えるかというのは、整体師として身体を扱う上で、どこかで必ずぶつかる問題だと思いますし、歯科の先生方の考え方・説明が一様ではない上、同じものに違う用語が使われることも少なくないので、私自身、以下に記すことをまとめるまでは混乱しておりましたので、私なりに調べたことを記し、その思考過程を読んでいただければ、理解・調べ物の一助になることもあると思い、ここに私の考え方を示しておこうと考える次第です。

 虫歯とは、専門的な言葉で「齲蝕(うしょく)」或いは「カリエス」といい、虫歯による穴を「齲窩(うか)」と言います。
 一般に、虫歯は「削れば治る」と軽く考えられているような気がしますが、病んだ歯は一生、治りません。痛くなった指を切り落として、痛くなくなったら「治った」とは言えないのと同じで、歯を削る以上、元に戻る訳ではありません。
 削れば、当然、削った場所にはプラスチックや金属などの詰め物・被せ物をします。金属やセラミックの詰め物・被せ物には、それなりの厚みがありますし(薄いと強度が不足します)、レジンというプラスチックでは「重合収縮」と言って、固まる時に隙間が出来てしまいます。つまり、詰め物や被せ物と歯の境には、必ず段差や隙間が出来るので(10ミクロン以上の隙間が出来ると言われています)、歯を磨いても磨き残しが出来やすく「二次カリエス」とか「二次齲蝕(うしょく)」と言って、詰め物や被せ物の周囲から虫歯になりやすいのです(詰め物・被せ物に経年劣化が起こると、次第に隙間は大きくなり、1ミクロン程度の虫歯菌が入り込んだりします)。
 また、歯の表面はエナメル質(琺瑯質=ほうろうしつ)と言って、人体の組織の中で最も硬い組織なのですが(水晶に匹敵)、詰め物・被せ物をした場所は、当然、削られて薄くなっているので、隙間があると、ここから歯が溶かされやすくなってしまうのです。エナメル質だけの虫歯(進行状態が「C1まで」)ならまだしも、エナメル質よりも軟らかい「象牙質(骨と同程度の硬さ)」に到達した虫歯(「C2」以降)なら、当然、さらに虫歯になりやすくなります。ですから、出来るだけ削らずに済ませるのが一番だということになります(エナメル質のモース硬度は6.5、象牙質はガラスと同じ5.5、鉄は4です。モース硬度とは「壊れにくさ」の指標ではなく「引っ掻いた時の傷つきにくさ」の指標です)。。
 つまり、最高の治療を受けたとしても、1度、治療を受けた歯は、1度も治療を受けたことがない健全な歯よりも虫歯になりやすく、30代以降の初発虫歯は少ないと言われているので、30代以降の虫歯の多くは「二次カリエス」か「悪化」ということになります(20代になると虫歯になりにくくなります。成人以前からの小さな虫歯が育って、30代になって悪化して目に見えるようになることもあります)。
 抜歯などによって歯が少なくなると、咬んだ時の力は残された歯だけで支えなければならなくなるので、負担が大きくなって、咬めなくなったり、他の歯までがダメになりやすくなります(歯周病で歯槽骨が薄くなると、ますますダメになりやすくなります)。他の歯のためにも1本の歯を大事にしなければなりません。

 子供の虫歯についても「どうせ永久歯が生えてくるから」などと軽視されるかも知れませんが、永久歯の生えない子供が増えていますので軽視しないようにして欲しいと思います(岐阜大学医学部衛生学非常勤講師の中里博泰先生は農薬の影響を指摘しておられますが、原因は、よく分かっていません)。
 「永久歯が生えかけている時」など、意図的・誘導的に乳歯を抜歯するのはともかく、虫歯などで不用意に乳歯を抜歯すると、抜いた歯の両側の歯が、無くなった歯の方へ倒れてきて、永久歯が生えるスペースが失われてしまうこともありますので、永久歯のためにも乳歯は必要なのです(乳歯の下に永久歯があっても、生涯、萌出しないこともあります。このような歯のことを埋伏歯[まいふくし]と言います)。
 乳歯は永久歯よりエナメル質が薄くて耐酸性が低く、歯髄(神経)が大きいので虫歯になると、すぐに歯髄に達してしまいます。そのため、虫歯になると進行が早く、抜髄(神経を抜くこと)や抜歯しなければならないほど悪化しやすいのですが、永久歯が生えてこない子供が増えているので、乳歯と言えども、前歯の抜歯は特に避ける必要があると思います(審美的に)。また、乳歯の虫歯が深くなると、下に埋もれた永久歯(歯胚)が形成不全を起こすと、永久歯が生えてきても弱い歯になってしまいます(「ターナーの歯」と言います)。子供の頃に歯科医院で痛い思いをすると、大人になっても歯科医院に行きたがらなくなるので、子供の頃は慣れるためにも、定期的に連れて行ってあげて欲しいと思います(「6歳臼歯」と呼ばれる第一大臼歯は特に虫歯になりやすいので注意が必要です)。

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 そもそも、虫歯の原因とは何なのでしょうか?。現在、虫歯の原因説としては、基本的にはウィロビー・D・ミラー(Willoughby D.Miller)の「化学細菌説」が軸になっています(ウィロビー・D・ミラーが化学細菌説を主張した頃、細菌の種類は特定されていませんでした)。化学細菌説とは「歯の表面に付着した飲食物から、菌が酸を作り出して虫歯を発生させる」というものです。その後、グリーン・バーディマン・ブラック(Greene Vardiman Black:現代歯学の父と呼ばれる)によって、プラーク(歯垢)などの要因が指摘されて、発生機序が、より詳細になってはいるものの、基本的には化学細菌説の延長線上にあると考えて良いと思います。

 虫歯は、主に「ミュータンス連鎖球菌(mutans streptococci)」の一種「ストレプトコッカス・ミュータンス(streptococcus mutans:以下「ミュータンス菌」)」が虫歯の発生させます。次に、虫歯の2大原因菌と呼ばれ「虫歯を重度にする力」はミュータンス菌以上と言われる「ストレプトコッカス・ソブリヌス(streptococcus sobrinus:以下「ソブリヌス菌」)」が非常に粘着性の高い「不溶性グルカン」を作り出し、そこに他の細菌が付着・増殖して「プラーク(歯垢)」が出来てきます。時間と共にプラークの厚みが増えてきて、歯の表面に酸素が届きにくくなると、嫌気性菌(酸素を嫌う菌)がプラーク内で増殖し、嫌気性菌の一種「乳酸桿菌(ラクトバチルス。Lactobacillus)」などが虫歯を悪化させるとされています(「歯垢=食べカス」ではありません。歯垢成分の約8割は細菌です。最近では「バイオフィルム」という言葉が広義に用いられるようになり「プラーク=バイオフィルム」になっているようです。排水管のヌメリもバイオフィルムの一種です)。

 これらの虫歯菌は、乳幼児期に「同じ食器を使う」などのルートで母親から感染しているケースが多いとされています(約5割が「母親」、約3割が「父親」、約2割が「その他」からの感染と言われています)。腸などと同じように、身体に棲む菌の割合が安定した後は外部からの菌の定着が難しくなるという傾向があり(菌どうしの拮抗が保たれる)、3歳までに口腔内での虫歯菌の割合が少ない場合、一生、虫歯になりにくいとされています(安定するのは「菌の量」ではなく「菌の割合〔細菌叢〕」なので、何らかの要因で減った場合でも時間が経つと元通りになります。ちなみに、抗生物質の投与などで身体に棲む菌の割合が大きく変化する現象を「菌交代」と言い、普段、私達の身体を守っている菌が急激に減少するため、病気になりやすくなります。「抗菌うがい薬」の使用は、悪玉菌を減らしますが、同時に善玉菌をも減らすので病原菌の侵入を許しやすく、薬剤耐性菌を生む原因にもなるので乱用は良くありません。実際、京都大学保健管理センターの調べでは、うがい薬を使うより、水道水での、うがいの方が風邪予防効果が高いという研究もあります)。
 通常「感染」というのは「身体の外部から内部へと侵入すること」で、病気として表面化することを「発病」と言います。口から肛門までのパイプは外界と通じており、腸などの組織へ侵入しない限り「身体内部」とは言えないので、口腔は身体内部ではありません。ですから、身体の外部にある「歯」に起こる「虫歯」という病気は「身体の外部から内部へ菌が侵入」して発病する訳ではないので、一般的な意味でいう「感染」とは異なります。
 よく、身体に良い効果をもたらす菌を「善玉菌」、身体に害をもたらす菌を「悪玉菌」と分類されますが、他に、免疫力が低下したり体調が悪化した時だけ悪玉化する「日和見菌(ひよりみきん)」に分類される菌もいます。
 身体の外部(腸内を含む)に棲んでいる菌を「常在菌」と言い、身体の外部である「口腔」に棲んでいる虫歯菌も「常在菌」なのですが、歯磨きが充分でなかったりすると、普段は「日和見菌」といえる虫歯菌が悪玉化します。ですから、風邪などのように、外部から体内に侵入してきた菌による感染症を「外因性感染症」と呼ぶのに対して、虫歯は「内因性感染症」と呼んで、通常の感染症(外因性感染症)とは区別されています。「虫歯菌に感染する」というと「虫歯菌が口の中に入ってきた」と考えがちかも知れませんが、口腔内は無菌ではなく、定住している菌が沢山いるのですから「口の中にいるだけ」の「歯が侵蝕されていない段階」では「感染」とは呼べない訳です(手の平の皮膚に風邪の菌が付着しただけでは「感染した」と呼べないのと同じです)。身体(歯)を侵蝕してきた段階で「感染した」ということですから、通常の感染症(外因性感染症)とは違って「感染」と「発症」は同時(同義)と言って良いのだと思います。

 ここまで書いてきた「最初にミュータンス菌やソブリヌス菌が虫歯を発生させ乳酸桿菌(ラクトバチルス)が虫歯を拡大・進行する」という考え方は、現在の虫歯の原因説の主流なのですが、実際には、これらの菌が「原因菌である」と特定されたとまでは言えないようです。
 「乳酸桿菌が虫歯を悪化させている」というのは「虫歯の初期には乳酸桿菌が見られないのに、深い虫歯からは乳酸桿菌が多く検出される」ことから「虫歯を悪化させる」と考えられているのですが、これは「悪化した虫歯」と「乳酸桿菌」の相関関係に過ぎず、その事実を以って「乳酸桿菌が原因である」とまでは言えないからです。
 というのは、乳酸桿菌は歯への付着能が弱く(歯に付着しにくい)、比較的、酸素を嫌う嫌気性菌のため、歯の表面で繁殖しにくいのです(学者により「嫌気性菌」の定義や分類の混乱が見られるようなので、深く立ち入らないことにしますが、ここでは「嫌気性菌」とします)。付着能の低い乳酸桿菌や他の嫌気性菌が歯の表面に付着・増殖するには、ソブリヌス菌が、粘着性が高い不溶性グルカンを産生するのを待たなければならないため(ソブリヌス菌は他の細菌が歯の表面に棲みやすくする訳です)、順序的にミュータンス菌やソブリヌス菌などより増殖が遅れることになります。おまけに、菌の多くは酸に弱いため、自分が代謝して生み出した酸で酸性度が上がってくると、多くの菌は死滅してしまうのですが、乳酸桿菌は酸に強いので生き残る可能性が高いのです。
 酸が虫歯を作るわけですから、多くの菌が死滅するほどの酸が生み出されている環境では、虫歯は重症化することになりやすいですし、酸に弱い菌は死滅することになります。それでも酸に強い乳酸桿菌は生き残っているので、必然的に「深い虫歯には乳酸桿菌が多く検出される」という相関関係が出来てしまいます。だから、そこに生き残っているだけでは「原因菌」とは特定しきれないのです。
 現在、虫歯菌の代表格であるミュータンス菌とソブリヌス菌だけを選択的に退治する「Aml」という溶菌酵素の開発が進んでいますが(抗菌剤を使う「3DS」という既存の処置法もあります)、ミュータンス菌ほどの酸を産生しないにしても、放線菌など、プラークの中の菌の殆どは酸を作り出して虫歯を進行させますので「虫歯の原因は特定の菌(ミュータンス菌やソブリヌス菌、乳酸桿菌など)である」というよりも、様々な菌が関与して虫歯になっていると考えられます(ミュータンス菌の数と虫歯の発生率の関係性は低いという論文もあるようですし、これまでに虫歯対策の薬剤の研究は色々あるようですが実用化したものは殆どないようです)。虫歯を起こしているとされているのは、いずれも殆どの人の身体に棲んでいる普通の常在菌であり、虫歯が起きている人の口の中だけに棲んでいる訳ではないので「虫歯を起こす菌=悪玉菌」なのではなく、虫歯菌は「善玉菌」でも「悪玉菌」でもなく、環境が悪化した時に悪玉化する「日和見菌」と言える可能性もあると思います。

 虫歯が、環境が悪化した時に「日和見菌」が悪玉化して起こる「環境要因で起こる病気」であることや、虫歯菌が口腔内の常在菌であるために、決してゼロにはならないこと、虫歯の直接的な原因が「菌」ではなく「酸」であることから、ここでは「虫歯=酸蝕症(さんしょくしょう)」と単純化したいと思います。
 「酸蝕症」という言葉を御存知の方なら「『齲蝕症(うしょくしょう=虫歯)』と『酸蝕症』は違うのではないか?」と仰るかも知れませんが、あえて、ここでは「虫歯の原因は酸」と考えたいと思います。「菌と虫歯」という話は他でも沢山語られていることですし、何より、私自身が「虫歯の原因は酸」と考えると非常に分かりやすかったからです(カロリーゼロ、糖質ゼロでも、酸度の高い炭酸飲料では歯が溶けます。東京医科歯科大学の中林宣男名誉教授をはじめ、歯科医の中にも「虫歯は酸蝕症」と考える方はおられます)。

 「虫歯予防のためには食後3分以内に歯を磨くのが効果的」と聞いたことはないでしょうか?。これは「食後3分で脱灰が始まるため、脱灰が始まる前に歯を磨くのが良い」ということなのですが、実は、これは「ステファンカーブ(脱灰曲線)」と呼ばれるものが誤解されたものです。
 アメリカのステファン(Stephan)という学者が、被験者に10%ブドウ糖水溶液でうがいをしてもらい、その後の口腔内のpH値を測定したところ、うがいして3分でpH値が急激に下がり(酸性に傾いた)、その後、約20~40分かかって元のpH値に戻る様子をグラフ化して発表しました。これがステファンカーブと呼ばれるものです。「虫歯予防はステファンカーブから始まった」と言えるほど利用されているものです。
 実際、このステファンカーブの「10%ブドウ糖水溶液で、うがいして3分でpH値が急上昇した」というのを根拠に「333運動(毎食後3回、3分以内に3分磨く)」という運動が始まりました。ところが、この「10%ブドウ糖水溶液で、うがいして3分でpH値が急上昇した」というのは「食後3分」という意味ではなく「糖を摂取して3分」ということなので「食後3分」ではなく「食事しはじめて3分」を意味しているのです。そのため「333運動」はナンセンスだと言われています。まぁ「歯を磨く意識向上」の切っ掛けにはなるので、ある程度の成果を上げることは可能でしょうが「それなりの成果を上げていたとしても、その基盤となる考え方が正しいことにはならない」ことが、ここから分かると思います。これは「333運動」に限らず、どのような統計データでも言えることなので、何でも、うのみにしない姿勢が大切だと思います。「論より証拠」と言いますが、結果は必ずしも「論」を証明するものではなく、結果(事実)から何を読み解くかによって「論」は変わるものだということです。

 食べ物を摂取すると、虫歯菌が食べ物(主に炭水化物)に含まれる糖をエサにして酸を産生します(酸は虫歯菌の代謝・排泄物です)。そして酸性度が上昇し、pH(ペーハー)が5.5になると歯が溶け始めます(個人差はありますが5.5前後が臨界pHと言われています)。
 歯の表面のエナメル質(「琺瑯質=ほうろう質)」の大部分〔90%以上。象牙質は約70%〕はリン酸カルシウム〔ハイドロキシアパタイト〕という無機質で出来ていて、肉眼では連続した面のように見えますが、実際には、エナメル質は多孔性の物質で、最表層のエナメル質より、やや内側が溶けやすくなっています。そのため、初期虫歯は「表層下脱灰」といって最表層より内側から溶けるため、表面からは分かりにくくなっています(酸が歯を溶かすことを「脱灰=だっかい」と言います)。
 元々、エナメル質は半透明なのですが(歯の色はエナメル質から透けて見える象牙質の色です)、表層下脱灰が起こると、言わば、歯の中に小さな穴が開いた状態になるので、エナメル質が白く濁った感じに見えるようになります。これを「ホワイトスポット」と呼びます(この状態の虫歯は白く濁ったように見えるだけで黒くはなりません)。
 以前、虫歯は「早期発見・早期治療」と言われ「虫歯は不可逆的(元には戻らない)なのだから、虫歯が小さい内に削る」という考え方が主流でした。ですから、歯科検診では、先端の尖った「探針」と呼ばれる道具を用いて、虫歯を探し出して早期発見・早期治療に力が注がれてきました。
 でも、現在では、脱灰は不可逆的なものではなく、初期虫歯であれば、失われたリン酸カルシウムが唾液中のリン酸カルシウムによって補充・修復される「再石灰化」によって回復することが判明していて、回復する可能性の高い部位のエナメル質を破壊する恐れが高い「探針」の使用は避けられるようになり、初期虫歯は治療しない「要観察歯」とするに留められるようになりました。つまり、虫歯は脱灰と再石灰化のバランスが崩れた時に起きるものなので、脱灰する時間を短くし、再石灰化の時間を長くすることが虫歯予防に役立つことになります。そこで役に立つのがステファンカーブです。

 ステファンカーブで、糖を摂取して3分で歯が溶け始めるpH(5.5)まで下がるのは、虫歯菌が糖を代謝して酸を放出するからです。そして、20~40分かけて、唾液に含まれる重炭酸塩による緩衝作用によってpH値が普段の値「中性」に戻ります(唾液には、アルカリ性に傾いても酸性に傾いても中性に戻そうとする働きがあります。唾液中の重炭酸塩濃度には個人差があり、濃度が高い人は歯垢まで石灰化しやすいので歯石が出来やすいです。逆に言えば、歯石が出来やすい人は虫歯になりにくいと言えます)。ステファンカーブによると、臨界pHである5.5に戻るのは食後約30分後ですので、単純には、歯が溶けるのは、pHが5.5以下になる「食後3分から、30分の間だけ」ということになります。その後は、唾液中のリン酸カルシウムが徐々に歯の中に戻る「再石灰化」が起こるので、歯が脱灰される(歯が溶ける)のが「糖を摂取して3分後~食後30分の間だけ」なら、虫歯になる可能性は、かなり低いでしょうが、虫歯菌が増殖して歯垢が歯の表面を覆ってしまうと、唾液の緩衝作用が届きにくくなるので、歯垢の中で産生される酸が歯を脱灰してしまいます(プラーク内で重要な役割をする不溶性グルカンは水に馴染みにくい「疎水性[そすいせい]」なので唾液の緩衝作用が影響しにくい)。

 ステファンカーブがブドウ糖水溶液で計測されたものであるのに対し、実際の食事はブドウ糖だけを摂っている訳ではなく、「歯磨き効果がある」と言われる食物繊維の多い食品を食べると、食後にはプラークの減少が見られますので、ステファンカーブにおけるpH変化だけで虫歯を語ることはできません(「食事をしなければプラークはできない」と考えがちだと思いますが、実際には、食事を抜くと、食事による歯磨き効果・唾液分泌が得られないことによってプラークは増えます。1日で最もプラークが多いのは朝食前だといわれます。就寝中は唾液分泌が減るからです。また、食品には歯磨き効果がありますので「よく咬まない」のは虫歯の原因にもなりえます)。
 「糖」と一口に言いますが、砂糖(スクロース)もブドウ糖(グルコース)も果糖(フルクトース)も酸の原料にはなりますが、プラークの中の粘着性物質「不溶性グルカン」の原料となるのは砂糖だけで「ブドウ糖や果糖は不溶性グルカンの原料にはならない」とされています。つまり、砂糖以外は「不溶性グルカンを作らない=プラークを育てにくい」ということです。ところが、砂糖もブドウ糖も果糖も虫歯の発生率に差はないという調査があり、不溶性グルカン、ひいてはプラークの量と虫歯は必ずしも関係ないことが示されています(プラーク内の細菌が糖によって酸を生み出していること自体は正しいと思いますので、プラークを完全に除去できるとすれば、糖を摂っても酸が生み出されないということになります。砂糖・ブドウ糖・果糖で虫歯の発生率に差があるかどうか、私には分かりませんが、先に書いた通り、紀元前3000年から歯磨きの習慣があったのですから、砂糖以外の糖も虫歯の原因になることは間違いないと思います)。

 糖を摂り、虫歯菌が生み出した酸によって脱灰(歯の破壊)が起こっても、脱灰(歯の破壊)している時間よりも再石灰化(歯の修復)の時間の方が長ければ虫歯にならないので、虫歯予防には「糖の総摂取量」を減らすことよりも「摂取する時間の総量」を減らすことの方が大切なのです。
 脱灰時間を減らし、再石灰化の時間を増やすことで虫歯は防げるということは、虫歯の発生に大きく関与するのは「ダラダラ食い」と「間食の多さ」だということです。食事中は口腔内が酸性になる訳ですから、ダラダラと食べ続けると脱灰時間が長くなりますし、食事の後、口腔内が徐々に中性に戻り、歯が修復されている最中に間食を摂ると、再び、口腔内は酸性に傾いて脱灰が始まってしまい、修復時間が短くなるからです(ダラダラ食いは歯の破壊時間を長くし、間食は修復時間を短くする)。

 実は「プラーク内の細菌が糖をエサにして酸を作り出す」ことを逆手にとった「歯磨きは食前の方が良い」という説があります。口内のプラークは、食事で摂取される糖をエサにして酸を生み出すのだから、食前にプラークを除去してしまえば糖を摂取しても酸が発生せず、脱灰を防止できるという訳です。「なるほど」と思える話ではあります。
 とはいえ、問題がないとも思えません。食前の歯磨きにしても食後の歯磨きにしても、全てのプラークを除去するのは非常に難しく、食後の歯磨きをしないで口内に残渣(食べ物のカス)を残したまま就寝するのは問題だと思います(先に書いた通り「1日で最もプラークが多いのは朝食前」と言われています。ちなみに、歯よりも舌の表面、頬の粘膜、歯肉の方が残渣が多いそうです)。
 唾液には、副交感神経の働きによって分泌される「漿液性唾液(しょうえきせいだえき。サラサラした唾液)」と、交感神経の働きによって分泌される「粘液性唾液(ねんえきせいだえき。粘性のある唾液)」の2種類があり、「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」などの大唾液腺、「口唇腺」「頬腺」「舌腺」などの小唾液腺から分泌されています(唾液腺は口腔腺とも呼ばれます)。
 唾液は主に、大唾液腺と呼ばれる「耳下腺(最大の唾液腺)」「顎下腺(耳下腺に次ぐ唾液腺)」「舌下腺」という3つの大唾液腺から分泌されているのですが、耳下腺がサラサラの唾液「漿液(しょうえき)性唾液」だけを分泌している漿液腺であるのに対し、顎下腺と舌下腺は漿液性唾液と粘性のある粘液性唾液の両方を分泌する混合腺になっています。細菌を洗い流す「洗浄力」が強いのは漿液性唾液なのですが、睡眠中は、ただでさえ唾液量が減るのに加え、漿液性唾液の分泌割合が減り、粘性のある粘液性唾液の割合が多くなるので、唾液の浄化作用・緩衝作用が減少してしまうのです(朝起きた時、口の中が粘っこくなっているのは粘液性唾液の影響が大きいと考えられます)。
 漿液性唾液は副交感神経の働きによって分泌されるものですが、副交感神経が優位になるはずの睡眠中には分泌量が減ります。これは「副交感神経優位」だから分泌されるというものではなく、副交感神経が「食事刺激」を受けて分泌するものだということでしょう。唾液には抗菌成分「リゾチーム」なども含まれているので、単純には唾液腺の周囲、特に漿液性唾液のみが分泌される耳下腺周囲は虫歯になりにくいと言えますが、磨き残しが出やすい部位でもあるので難しいところです)。

 虫歯菌は常在菌なので、いくら歯磨きをしてもゼロにはならず、歯磨き後、徐々に歯垢が出来てきます。酸素に触れやすい初期の歯垢には酸素を好む好気性菌が多いのですが、歯垢の厚みが増して酸素が届きにくくなると、酸素を嫌う嫌気性菌の割合が多くなってきます。
 歯磨き後、歯垢が見える程度になるのが約6時間。さらに細菌が増殖して、プラーク内のpHが歯を溶かす「5.5以下」になるには、歯磨きでプラークを落としてから約24時間かかると言われているので、理論上、1日に1度、きちんと歯磨きをすれば、単純には虫歯にならないことになります。でも、現実的に「完璧に歯を磨く」ことは非常に難しいので、毎日、複数回の歯磨きをして、前回の歯磨きで落としきれなかったプラークを落としている訳です(大雑把な歯磨きを1日に何度もするよりも、丁寧な歯磨きを1日1回する方が虫歯予防には効果的だと言って良いと思います)。
 そう思えば、就寝前に歯を磨き、朝食によって虫歯菌が酸を生み出す前に「前夜に落としきれなかったプラークを落とす」のは良い方法だと言えると思います(丁寧に磨く人ほど「磨き過ぎ」を原因として歯を失うことが多いですし、1日3回歯を磨かなくても、就寝前と朝食前に丁寧に磨くだけで良いと思います。丁寧に磨いて口腔内の菌を少なくしておけば、残渣腐敗による口臭の恐れは少ないと思います)。
 「歯磨きは食前の方が良い」というと「そんなバカな」という声が聞こえてきそうですが「なぜ、あの人は虫歯にならないのか?」という、よくある疑問を解く大きな鍵の1つになっていると思います(先に書いた通り就寝前は食後の方が良いと思います)。よくある回答に「体質」「虫歯になりにくい人がいる」というのがありますが、そんな回答より「食前の歯磨き」は科学的な示唆に富んだ説明だと思います。

 歯を磨くのに必要なのは歯ブラシとデンタルフロス、歯間ブラシなどの歯間清掃具です。歯ブラシだけのブラッシングでは歯垢の50~70%しか除去できないと言われており、歯間清掃具の使用は必要不可欠です(特に、歯周病治療では歯間ブラシを歯周ポケットへ差し込んでの縦磨きすら必要になります。歯間ブラシのワイヤーが歯を擦り続けると歯が削れてきますので、歯周病が改善してくれば、歯間ブラシを使わず、デンタルフロスだけでも良いのではないかと思います。もちろん「上手く使えば」の話です。デンタルフロスは良い物を使って下さい。私が使ったことのあるプラスチックフレーム(ホルダー)付きの安物は、最短で使用1回目の清掃中に切れてしまいました)。
 「歯間清掃具が必要」というのは電動歯ブラシでも同じです。電動歯ブラシは歯面を撫でるように磨きやすいので、歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間などに毛先が行き届きにくく、磨き残しが出やすいので「歯を磨く」という行為には、道具を問わず「歯間清掃具の使用は不可欠」と考えて欲しいと思います(歯間清掃具を使わなければ「隣接面齲蝕=隣接面カリエス」が起こるのは時間の問題でしょう)。それと、歯ブラシは、毛の根元のプラスチックの部分から毛先が外へはみ出るようになったら新しい歯ブラシと交換して下さいね。

歯間ブラシ縦入れ


 基本的に「歯を磨く」という目的に歯磨き剤(歯磨き粉・歯磨きペースト・歯磨きジェル)は必要ありません。むしろ、使うことの爽快感で「磨けた」と錯覚してしまう弊害の方が大きいかも知れません。歯磨きの大目的である「口内を清掃する」ためには歯磨き剤は不要なのですが(使わない方が良いくらい)、その付加価値として歯磨き剤を使うのだと考えれば良いと思います(プラークを落とすのは歯磨き剤ではなく、歯ブラシの当て方によるものが大きい)。
 歯磨き剤を使う利点は、着色汚れを落とすための「研磨剤」と、歯質を強くする「フッ素」の2点に尽きると思いますが「フッ素を歯に取り込む量を少しでも増やそう」として歯磨き剤の量を増やしてもダメです(虫歯予防のためのフッ素使用は「低濃度多数回」が推奨されています。着色汚れは研磨剤を使わなければ落とすのは難しいです)。フッ素効果を有効活用する上で大切なのは、フッ素の「使用量」よりも口内への「残留量」なので、歯磨き後の口をすすぐのは「少量の水で少数回」が良いとされています(但し「フッ素が歯質を強くする」効果は子供に対しては認められていますが、大人に対する効果についてはハッキリしないようです。フッ素には、再石灰化を促進する作用以外に、酸を弱めて脱灰を抑制する作用があるとされているようですので「効果がない」ということはないのではないかと思います)。

 「歯磨き剤に入っている研磨剤が歯を磨耗させる」という話を聞きますが「それはない」というのが歯科医の大方の意見のようです。歯磨き剤(「歯磨剤=しまざい」と言います)に研磨剤が入っているのは、茶渋などによる着色を落とすためのもので、研磨剤が入っていない歯磨き剤では歯が着色されやすいのですが、現在、研磨剤は軟らかい「低研磨性」のもの(RDA値が低いもの)が主流になっているので「歯磨き剤の研磨剤が歯を磨耗させることはない」と考えられているようです(但し、歯ぐきの下がった歯の根は削れやすいです。また、ホワイトニング系の歯磨き剤には研磨性の高い研磨剤が入っていることもあります。ジェルタイプの歯磨き剤には研磨剤が入っていないと考えて良いと思います。もちろん「全て」とは言いません)。
 とはいえ、現在でも研磨性の高い歯磨き剤はあるようですし、研磨剤が入っている歯磨き剤が、研磨剤が入っていないものより歯を磨耗させやすいのは確かだと思いますが、歯の磨耗が進んでいるケースで考えなければならないのは、研磨剤よりも「力の入れ過ぎ」ではないかと思います。ですから「かため」の歯ブラシや歯磨き剤の付け過ぎは避け、軽やかに磨くと良いと思います(研磨剤が歯よりも軟らかいと言っても、歯ぐきより硬いことは明らかなので、歯ぐきを削らないよう、注意が必要かも知れません。歯周病予防には歯と歯ぐきの間[歯肉溝]のブラッシングが欠かせないので難しいところですね)。
 先に「就寝前に歯を磨き、朝食によって虫歯菌が酸を生み出す前に『前夜に落としきれなかったプラークを落とす』のは良い方法だと言えると思います」と書きましたが、歯磨き剤を使うと食事の味がおかしくなるので、就寝前に歯磨き剤を使い、朝食前は歯磨き剤を使わないというのは1つの考え方だと思います(「研磨剤を含まない歯磨き剤と研磨剤の入った歯磨き剤を隔日で使う」といった使い分けも良いでしょう)。

 1日3回、真面目に歯を磨いてきた人にとって「1日2回の歯磨き」というと不安になるかも知れませんが、真面目に磨いている人ほど、磨き過ぎで歯をダメにしてしまうことが少なくありません。丁寧に磨いて虫歯でダメに「なる」のは仕方ありませんが、磨き過ぎてダメに「する」のはバカバカしいと思います。私は「一生、虫歯にならないように、しっかり歯を磨く」という考え方ではなく「少々問題があってもいいから、一生、自分の歯を維持する磨き方」を考える方がバランスが良いと思います。
 「きちんと歯磨きして、それで虫歯になったら、あとは歯科医に任せる」という考え方で良いと思います。「自分で出来ること(セルフケア)」と「歯科医(プロフェッショナルケア)」の住み分けを考える訳です。「完璧に磨いている」という自負があると、虫歯が出来てしまった時に、虫歯の発見が遅れることにもなりかねません(経験者は語る。笑)。丁寧に磨いた上で、日頃から「虫歯になっていないか」に注意することで早めの受診につなげる方が、結果的に「歯を維持する」ことに貢献するのではないかと思います。そういう意味で、1日に何度も雑な歯磨きをしたり、磨き過ぎたりするよりかは、1日2回、丁寧に磨くことの方が良いと思うのです。

 なお、ホワイトニングに関しては「歯の表面に無数の傷をつけて『曇った状態』にすることで歯を白くする」ものが少なくないようです。このような方法では虫歯になりやすくなりますので注意が必要です。

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 歯は歯ぐきによって支えられているのではなく、歯の根っこの「歯根膜(periodontium)」という組織が支えています。歯根膜の大部分は膠原性の線維(シャーピー線維)という靭帯のような組織なのですが、神経線維も含まれています。歯の周囲が硬組織だけで構成されていたら歯に掛かる力を感じることは出来ませんが、歯の根に歯根膜という軟組織があり、そこに神経線維が含まれているから歯ごたえ・食感を楽しむことが出来るのです。
 歯根膜は歯槽壁の骨膜と歯の間で、歯を係留していて、0.2mm前後の厚みしかありませんが、歯に掛かる力を吸収するクッションとして働くと同時に、歯根膜の神経線維が歯に掛かる力を感知して脳に伝えることで、アゴを適当な位置にずらして一部の歯だけに力が掛かり過ぎないよう調整しています。歯根膜はクッションであると同時に、感覚器としても働いている訳です(歯根膜内の糸球状の血管も液体クッションの役割をしていると言われています)。
 もし、歯が歯槽骨(アゴの骨)から直接生えていたら、歯根膜がもたらす「クッション」も「感覚」もなくなり、食事などで数十kgにも及ぶ力で咬みしめることを繰り返すと、歯やアゴには強い衝撃が加わり続けて、すぐに歯が割れたり欠けたりすることになるでしょう(「歯の神経=歯髄」には痛覚以外の感覚はないので、咀嚼における圧覚は歯根膜の神経が受け持ちます。冷たい飲物で歯が痛むのは歯髄には痛覚しかないからです)。
 健康な歯でも、指で押すと動揺するのは、歯根膜が歯に可動性をもたらしているからで、これは歯が歯槽骨に固定されたものではなく「歯根膜は関節である」ということでもあります。だからこそ「歯の矯正」が可能になるのです。
 歯は垂直方向(縦軸)への力には強いのですが、前後方向(歯列に対しての前後)には非常に弱く、数十gの力を持続的にかけるだけで歯槽骨の骨吸収が起こり、歯が移動するのです(歯槽骨の骨膜が反応して破骨細胞が歯槽骨を吸収します。「瞬間的な力には強いが持続的な力には弱い」という理由もあります)。乳歯から永久歯に生え変わる際、乳歯より内側に生えてきてしまうことがありますが、その後の乳歯脱落の後、舌に押されて前方に出てきます。歯が前後方向への力に弱いのは歯並びを担保するためなのかも知れません(逆に、唇の力が強いと歯は内側に押し込まれることになります。「弄舌癖[ろうぜつへき]」と呼ばれる舌の癖があると歯並びが悪くなりやすいです)。

 また、歯根膜が関節である以上、身体の他の関節と同じように固まってくることもあります。咬み合わせが固定されてしまうと、身体に悪影響が出てくることがあります。そのような場合、整体的な対処法の1つとして歯根膜を緩めることで改善を図ります(※施術は口腔外から行います。このような方法は「どこの整体院でも行われている」という訳ではありませんので念のため)。

 余談ですが、私は、咬み合わせよりも食いしばり・咬みしめ(クレンチング)を重視しています。咬み合わせが問題になるのは「咬んでいる時」だけで、仮に、1日中、口を開けて過ごしたとしたら、単純には、咬み合わせは問題にならないですよね?。本来、自然な状態(安静時)では上下の歯が接触していないのが正常だとされており、約2mmの「安静位空隙(あんせいいくうげき)」があるとされていて、1日を通して考えても、1回の食事時間が30分として、1日3回の食事時間は1時間30分ですが、実際には咀嚼で口の開閉を繰り返しているので、食事中に咬んでいる時間は、せいぜい1日数十分にしかならないと思います(一説には15分程度とも言われます)。それにも関わらず、身体に影響が出てくるのは、活動中・睡眠中に食いしばり・咬みしめをしているからだと思います(食いしばり・咬みしめをすると、圧電と呼ばれる現象によってピエゾ電流が発生し、骨芽細胞が活性化したりカルシウムが沈着するなどして、歯の裏側の、歯が埋まっている歯肉の下辺りがボコボコしてくる「下顎隆起」が起こることがあります)。

 より多くの力を必要とする時に「歯を食いしばって」などと言われ、歯を食いしばることで、より多くの力を発揮させようとすることもありますが、力を発揮させる方法には2つあります。歯を食いしばることで身体を固定・安定させて力を発揮させようとする方法と、リラックスしたり、大声を発声して筋肉に掛かっているブレーキを外して、より多くの力を発揮させようとする方法です。ですから、歯を食いしばることで、より力を発揮させることも可能なのですが、身体のことを考えると、歯の食いしばりを習慣化するよりは、リラックスしたり、大声を発声して力を発揮する方法の方が好ましいと思います。
 破壊行為として最も原始的なものである「咬む」という行為はストレス解消的な側面があるので、食いしばり・咬みしめは精神的な影響も強く、無意識の食いしばり・咬みしめ・歯ぎしり(Bruxism=ブラキシズム。食いしばりも歯ぎしりの一種とされます。微細なヒビを形成し、虫歯や知覚過敏の原因にもなると考えられているようです)を改善することは容易ではないのですが、単純には、全身(特に腕)の筋緊張のレベルを落とすと共に、顎周りの筋緊張を解除することで改善を行います(腕の筋肉は脚や体幹部の筋肉に比べて貧弱であるにも関わらず、力む機会は脚や体幹部の筋肉以上に多いために筋緊張が残りやすく、その緊張に同調して他の部位も緊張しやすくなっているので腕の緊張の解除は重要です。「力み」「緊張」は腕や顎を起点にすることも多いです)。ストレスは筋緊張を生みますが、逆に、筋緊張を解除することでもストレスを緩和することが出来ますので、整体的アプローチによって、食いしばり・咬みしめを改善することが出来ると考えています。同じように、顎関節症も「咬み合わせが悪いから顎関節症になる」のではなく、食いしばりなどによって顎関節に過度な負担が掛かることによって起こる病気だと思います(首の神経と、顎周りにある三叉神経とは近接しているので、肩コリから顎に痛みが出ることもあります)。食いしばる訳ですから、咬み合わせは顎関節症の一因(誘因の1つ)であると思いますが、直接的な原因としては歯よりも筋肉にあると言えると思います(顎関節症が20~30代の若い世代に多いのも「筋力が強い」ことの影響を思わせます)。多くの場合、咬筋と翼突筋を自分でマッサージするだけでも改善させられると思います。

 そもそも「咬み合わせ」というものは固定された一定のものではありません。「咬み合わせ」というと「矯正」を思いつく人が多いと思うのですが、一般的な「歯並び矯正」の多くは「見た目を良くするため」の矯正(ここでは「歯列矯正」とします)であって、「咬み合わせを良くする」ために必要なのは「矯正」よりも「調整」だと思います(見た目だけを考えた「歯列矯正」では身体に悪影響が出ることも少なくありません)。
 歯科医院で詰め物や被せ物をした後、歯科医は色の付いた咬合紙で咬み合わせを診ますが「咬み合わせ」のことを考えるなら、歯科医院のベッドに座って後ろに傾いた状態で咬み合わせを判定するのは問題です(通常、こんな姿勢で「咬む」という行為を行うことはないので、この状態での判定には問題があると言わざるを得ません)。

 実際に試してもらえれば分かると思うのですが、上を向いて歯をカチカチと咬み合わせると奥歯がよく当たり、下を向いて歯をカチカチしてみると前歯がよく当たります。これは重力や構造上の制約によってアゴの位置が変わっているからです。だからこそ「咬み合わせを良くしよう」とするなら、少なくとも患者さんの視線を水平の状態(ニュートラルな状態)にした上で咬み合わせを診ることが大事だと思います(通常、咬む姿勢は視線水平位か、視線水平位より下向きなのですから)。

 でも、私達が「1日のうちで最も長い時間を過ごしている姿勢」が「ニュートラルな姿勢」と言えるかどうかは分かりません(仕事によっては、うつむき気味の姿勢で長時間過ごしているかも知れません)。ある姿勢に合わせて「良い咬み合わせ」を作っても、私達は一定の姿勢でいる訳ではありません。デスクワークが多い人なら下を向いている時間が長いですし、睡眠中の歯ぎしりの悪影響が酷い人なら、(上を向いて眠る時間が長い人の場合)上を向いた状態で咬み合わせを合わせなければならないことになります(歯ぎしりの場合、マウスピースなどの改善策がありますが)。
 上を向いた姿勢か、下を向いた姿勢か、水平に見ている姿勢かというのは「大した違いではない」と思う方もいるかも知れませんが、咬み合わせには1mm以下の精度が求められるものなので重要な問題と言えると思います。そもそも、咬合学には統一見解はなく、大雑把に言っても「仮想正常咬合(機能を最大限に発揮すると考えられる理想の咬合)」「典型正常咬合(ある人種・民族における特徴が機能しやすいと考えられる咬合)」「機能正常咬合(構造的に整っていなくても機能的に問題がないと考えられる咬合)」「個性正常咬合(歯や顎の大きさなど、各個人の形態に応じた咬合)」などの概念があり、その概念の下に「アンテリアガイダンス(前歯による咬合運動の誘導)」を重視するグループや「顎関節」を重視するグループなど、様々な流派があって「どこを基準にするか」さえ定説がありません(咬合に限らず、歯列矯正でも「咀嚼などの機能に影響が少ない第一小臼歯を便宜抜歯して他の歯が動くスペースを作る」という考え方がある一方で、全く逆に「第一小臼歯は重要な歯なので抜歯すると悪影響がある」という考え方があったり「ドミノ倒しのように、奥歯によって他の歯が押されることで歯列不正が起こる」という考え方があるなど、咬合学と同様、矯正学にも定説はないようです)。

 それは「決まった咬み合わせはない」「咬み合わせとは流動的なものである」ということの裏返しとも言え、歯科医自身の身体観の違いが咬合観の違いともなっている訳です。
 だから「『Aの姿勢をとることが多い人の身体』に適した身体観を持った咬合治療は、Aの姿勢をとることが多い身体に良い影響を与えるけれども、その身体観の範囲を超えた身体では悪影響が出る」ということではないでしょうか?。不幸なことに、1つの身体観が全ての身体に受け入れられる訳ではなく、その身体観が「受け入れられる身体か、受け入れられない身体か?」を見極めることは非常に困難なので「矯正・治療を行った結果、身体に悪影響が出てしまうケース」をゼロには出来ていないのが現状だと思います(また、矯正器具による圧刺激への違和感によって咬みしめが起こり、何らかの症状が出ることも考えられます。矯正に限らず、皮膚の出来物などを「触らない方がいい」と言われても、違和感から触ってしまうことがあるでしょう?。同じように、人間は、違和感があると他の刺激で紛らわそうとしてしまうので、矯正による圧刺激で咬みしめが起こる可能性があると思います。逆に、違和感の気持ち悪さで「食いしばり」「咬みしめ」をしなくなるケースもあるかも知れません)。

 相互関係があるとはいえ、歯並び(歯列)と咬み合わせ(咬合)は分けて考える必要があると思います。歯並びが悪くても、上下の咬合する面が、うまく咬み合っていれば「歯並びは悪いけど咬み合わせは良い」ということですし、歯並びはキレイでも上下の咬合する面が合っていなければ「歯並びはキレイけど咬み合わせは悪い」ということになります。咬み合わせは、あくまでも上下の関係(咬合する面の関係)であり、歯並びは歯の横の関係です。これは全く意味の違うことで、歯の上下の凹凸は、歯の前面とは関係ないことは、お分かりいただけると思います。大雑把な書き方かも知れませんが、少なくとも、歯の上面は、整った平面をしている訳ではなく、凹凸があります。歯並びや咬み合わせなど、ある程度の歪みがあるとしても、歪んでいるなりに、長年の時間をかけてバランスをとってきたものですから、それを急激に変化させることの難しさ・危険性は、お分かりいただけるのではないでしょうか?。

 もちろん「食いしばりや咬みしめは良くない」と言っても「咬むことは良くない」とか「食事時の咬む回数は少ない方が良い」と言っている訳ではありません。咬むことは唾液の分泌を促すので、虫歯予防になりますし、唾液に含まれる酵素が消化を助けます(他にも、粘膜を修復する「EGF」や神経成長因子の「NFG」など、様々な物質が含まれています)。また、アゴの内部には「翼突筋静脈叢(よくとつきんじょうみゃくそう)」という血管の集まりがあり、この場所は血液が集まりやすい場所なのですが、咬むことによる圧迫でポンプされると、翼突筋静脈叢は心臓のように働きますので、脳の血流量が増えて脳を活性化します。よく咬むことは大切なことではあるのですが、持続的に咬み続ける(持続的に固定化する)「食いしばり」「咬みしめ」は、歯に負担をかけ、顎関節症の原因になり、全身をも狂わせる可能性を持っているということです(上下の歯が接触しているだけでも「食いしばり」「咬みしめ」を誘発します)。よく「現代人は昔の人より咬まなくなったために顎の筋肉が弱くなった」と言われますが「現代人がストレスなどによって『持続的に咬み続けている』ために顎に負担をかけている」こととは全く別のことです。

 また「咬み合わせ」と言うと、歯の萌出と歯の並び方ばかりが注目されて、歯列矯正や切削ばかりが論じられやすいと思うのですが、歯の土台にも歪みが起こることを忘れてはいけません(歯列が歪んだ理由が存在し、歪んでいるなりのバランスがあるからこそ「矯正によって理想的な歯列」が達成された後も、元に戻るのを防ぐため「リテーナー」と呼ばれるような保定装置を長期間使用しなければ元に戻ろうとしてしまうのです)。頭蓋骨はカルシウム製のヘルメットではなく、20個以上の骨が組み合わさった可動物だからです(骨と骨の間は、わずかな可動性を持った関節です)。
 咬み合わせを「構造」で考える上で、2つの方向性があります。1つは「理想的な咬み合わせ」を想定した上で、その咬み合わせに近づける方向です。つまり、頭蓋骨が歪んでいようがいまいが、理想的な咬み合わせを作り上げる訳です。これは「歯から見た咬み合わせ」を追求する方向だと言えるかも知れません。でも、歯の萌出と歯の並び方だけに囚われていると、歯の土台である頭蓋骨、上顎が歪んでいるのに、正常に萌出している歯に不可逆的な影響を与えないとも限らない方向だと言えるのではないでしょうか?。
 咬み合わせを考える、もう1つの方向は、咬んだ時に頭や首、姿勢などに歪みが出たり、緊張が出る場合を「咬み合わせが悪い」と考える方向です(全く歪みが出ないということはないでしょうが、ここでいう「歪み」は「病的な歪み」という意味だと考えて下さい)。そもそも、現時点で「何が正しい咬み合わせか?」が分かっていないのだから「悪影響が出ないなら『良し』としよう」という考え方です。これは「身体を通して咬み合わせを見ている」ということが出来ると思います。つまり、見た目が少々悪くても「悪影響がないなら矯正・治療は考えない」という方向で、私は後者の考え方を支持します。
 ここまで、咬み合わせを「構造」でとらえる考え方を書いてきましたが、「咬み合わせ治療」には「構造派」に対して「機能派」と呼べる考え方もあります(「構造派」「機能派」は、ここでの便宜的な区分けであり、一般的に、そう呼ばれている訳ではありません)。詳しくは書きませんが「発語・咀嚼」を計測して咬み合わせを評価する考え方や「咬み合わせが悪いと聴力が低下する」という主張を基に「聴力」を利用して咬み合わせを評価する考え方などがあります。

 構造派にしろ、機能派にしろ、様々な流派があり、それぞれ高度な理論付けがなされているので、完成された理論であるかのように思いがちですが「咬み合わせが原因」とみられる症状の治療法に「確実」といえるものはないのが現状だと思います。「咬合」「生活習慣」「精神的影響」など、複雑な要素が絡んでいるからです(顎関節症など「咬み合わせが原因」とされる症状が昔より増えているのはストレスが原因の1つと考えられます)。ですが、基本的に「咬み合わせ治療」で得られる「症状の改善」の多くは生活習慣の改善で得られると思います。実際、舌で歯を押したり唇を咬みしめたり(不良習癖)、ほおづえや横向き寝などの生活習慣を改めさせることで顎関節症治療に効果を上げている歯科医グループもあります(そのグループでは、それらの悪習慣を「態癖=たいへき」と呼んでいます)。確実な治療法はないだけに、不可逆的な(元に戻らない)治療法には慎重であって欲しいと思います(そもそも、歯が咬み合わせに応じて動いて、咬合する面が変化することも少なくないようです)。上下の歯を接触させるだけでも筋肉の緊張が始まりますので、顎関節症など「咬み合わせが原因ではないか?」と思われる症状をお持ちの方は「歯列接触癖」に気をつけてみて下さい。矯正するにしてもしないにしても「筋機能療法」は欠かせないので、やって損はないと思います。
 そもそも、成長には個人差があるので、歯の接触面の適正位置と、上顎骨と下顎骨の適正位置が一致しているとは限りませんし、そこに個々人の筋肉構造からくる顎の適正位置が関与してきます。さらには、動きのある背骨の上にのっかっている上顎骨(頭蓋骨)の位置は固定されている訳ではないので、歯の接触面だけで、歯から顎にかけてを適正化するのは非常に難しいのです。その中で持続的な咬合力を減少させることは、現実的な選択肢として最も安全だと言えると思います。

 最近、咬みしめは腹部膨満感やゲップ、ガスなどの原因になりうるとの指摘も出てきています。東京医科歯科大学歯学部付属病院の小野繁院長によると「咬みしめによって舌が上顎に押しつけられると、舌の上を通って唾液が喉に流れ込みやすくなるので、頻繁に唾液を飲み込むことになり、空気と一緒に唾液を飲み込んでしまう(呑気)としており、これを「かみしめ呑気症」と名づけられています(咬みしめなくても、舌を上顎に押しつけるだけで同じことが起こります)。消化管内で発生するガスの60~70%は、飲み込んだ空気(呑気)だと言われているので、呑気量が多いと、腹部膨満感やゲップ、ガスなどの原因になるのです。

 ここまで「咬み合わせよりも食いしばり」と書いてきましたし、矯正に対して否定的なことを書いてきました。でも、当然ながら、完全に閉じても前歯で咬めない「開咬」と呼ばれるようなケースや、上顎の歯ぐきから横向きに生えているような重度の歯列不正は咬み合わせ以前の問題で、矯正の必要があるでしょう(他にも、歯並びによっては「リスピング」と呼ばれる構音[発音]障害が起こるようなこともあります)。そのようなケースでは、まともに咬むことは出来ないので、それは当然として、ここで少し触れておきたいのは「出っ歯」です。
 きちんと口が閉じられないような重度の出っ歯では口呼吸になりやすいのです(口呼吸になると、歯肉が乾き、歯肉に炎症が起きやすいですし、鼻呼吸より病気になりやすいです)。人間の身体は、使う部分は発達し、使わない部分は発達しませんので、鼻を使わない「口呼吸」を行っていると、鼻の穴が前を向きやすくなりますので、美容の面でも口呼吸がオススメです(口呼吸の人が鼻呼吸をするようになると鼻の穴が下を向いてきやすいです。「前歯」と言っても、前歯が単純に出ているだけなのか、奥歯に押されて出てきているのかによって、治療法が変わってきます。奥歯に押されている場合は奥歯から治さなければ意味がありません)。
 歯並びが良いと、歯が磨きやすいだけでなく、唾液の流れも良くなるので虫歯予防の面でも有効です。歯並びが良いことは審美的に良いのは当然ですが、身体の不調の原因を歯並びに求めることには慎重であって欲しいと思います。つまり「歯列矯正」は、具体的な「症状を治すための矯正」ではなく「整った歯並びを手に入れる」ものと捉えて欲しいのです。ただ、どの矯正理論・矯正歯科をとるかは非常に難しいところではあるのですが……(矯正を深く学んでいる「矯正専門歯科」がある一方、矯正学を学んでいなくても「矯正歯科」を標榜できますので、技量の差は大きいようです。「矯正専門歯科なら大丈夫」という訳ではないので念のため)。
 また、永久歯に生え変わる前は「みにくいアヒルの子の時代(ugly duckling stage)」と呼ばれ、「生理的空隙(せいりてきくうげき)」と言って、永久歯が生えるためのスペースとして隙間が確保されているのが正常なので、乳歯列の隙間は気にし過ぎないようにして欲しいことも付記しておきます。最近は顎の発達が悪く「閉鎖型歯列(歯と歯の間に隙間が少ない歯列)」の子供が増えているので「空きっ歯」ぐらいで良いのです。比較的、生えてくるのが遅い「犬歯」が生えてくることで歯並びが整うのが正常で、永久歯が生えてくる前の矯正では「保隙(ほげき)」と言って、永久歯が生えてくる隙間を考慮するほどです。
 幼年期の歯列不正は歯性・歯槽性のものですが、やがて骨格性のものとして定着していきます。基本的に、歯の矯正は永久歯が生え揃う12歳頃から始めることが多いようですが、成長・発達に悪影響を及ぼすほどの、重度の歯列不正は、上顎の成長のピークである「10歳までに矯正を開始するのが良い」と言われています(「永久歯が生える前が良い」という主張もあるようです)。歯列不正は基本的に後天的なものが多いですが、胎児期の影響による先天的なものや遺伝性のものもあります。遺伝性のものとしては「ハプスブルグ家の不正咬合」と呼ばれるものが有名で、18世代、41人以上に「下顎前突(受け口)」が見られたそうです。

 ちなみに「楔状欠損(くさびじょうけっそん。歯と歯ぐきの境の歯表面がクサビ型に欠けた状態)」は「過度のブラッシングが原因」とされていましたが、歯磨きの習慣のない人や動物にも楔状欠損にも見られることや、動物実験で楔状欠損が起こらないことなどによって「ブラッシング原因説」は疑問視されていて、現在は、過度の咬合力が部分的にかかることによる歯の破損が楔状欠損の原因だと考えられています。これは「咬み合わせによる悪影響」と見なして良いかも知れません(「楔状欠損」は「外傷性咬合」が原因と考えて良いのかも知れません。ちなみに「外傷性咬合」は「身体に損傷を与えやすい『不調和な咬合』」のことであり、歯ぎしりなどの過大な力によって歯周組織に損傷が起こる「咬合性外傷」とは区別されます)。

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 「咬み合わせ」の話への脱線が長くなりましたが、ここまで虫歯予防について書いてきました。では、虫歯になってしまった時、どんな治療が望ましいのでしょうか?。

 虫歯になると、酸によって軟らかくなるなどした「変質した歯」を切削することになります。酸によって変質した歯を切削する際、削り残しがあると再発しやすくなりますが、削り過ぎると痛みが出ますので、現在は、問題のない部分は出来るだけ残す「Minimal Intervention(ミニマル インターベンション=最小侵襲療法。略して「MI治療」とも呼ばれます)」という考え方の歯科医が増えてきています(基本的に「最小侵襲療法」は「小さな虫歯を適応範囲とする」と考えて下さい。「痛みの少ない治療」の恩恵を得ようとするなら「早めに歯科に行く」という自己努力が必要だということで、どんな場合でも最小侵襲療法が適用になる訳ではありません。最小侵襲療法を実施している歯科医を探して通うのは良いのですが「『最小限の切削』は虫歯の部位を取り残しやすい」ということでもあるので「自分のケースに最小侵襲療法が適用できるかどうか」を歯科医に訊いた上で、利用するかどうかの最終的な判断は歯科医に任せるのが良いでしょう)。

 カリソルブ……回転式切削器具(タービン、エンジン)などで削るのではなく、低濃度の次亜塩素酸ナトリウムとアミノ酸などの混合液を塗布し、虫歯の部分を軟化させて除去する方法。齲蝕進行度がC1~C2の虫歯に適用できます。

 エアーアブレーション(ロンドフレックス)……回転式切削器具(タービンやエンジン)などで削るのではなく、高圧でパウダー(酸化アルミナなど)を吹き付けて歯を削る方法。回転式切削器具(タービン、エンジン)よりも痛みが少ない。

 ヒールオゾン……ヒールオゾンは「齲蝕(うしょく)の除去方法」ではありませんが、殺菌力の強いオゾンを利用して殺菌し、フッ素で再石灰化を促進しながら治療する方法です(削る量は少なくて済みます)。「殺菌して治療する」という意味では「3Mix-MP法」と同じですが、薬剤を用いない分、安全性が高いと言えます(但し、有効性の検証は充分とは言えません。これは、話題になっている3Mix-MP法についても同じことが言えます)。

 ※……他にもヤグレーザー、ウォーターレーザーをはじめ、色々な機械などがあるようですし、歯科治療における機器は今後も増えていくと思います。興味がある方は調べてみて下さい(但し、保険は利かないものとお考え下さい)。また、通常の治療に麻酔を使ったり、鎮静作用(麻酔作用ではなく鎮静作用)のある「笑気ガス」を使うなどして痛みを軽減させる治療を行っている歯科医院もあり(保険適用可能)、痛みを少なくするために様々な工夫がなされています。

 何より大事なのは「早期発見・早期治療」ですが、初期虫歯と呼ばれる「C1(象牙質に達していない虫歯。痛みが出ることは少ない)」の状態では「削る治療」は避けるべきといわれています(現在は一般的な考え方になっています)。でも、削らなければならない段階になると、小さな虫歯ではプラスチックの「詰め物」をし、中程度の虫歯では型をとって成型したものを填め込み、進行した虫歯ではセラミックや金属などの「被せ物(クラウン)」をすることになります(クラウン以外にも「インレー」や「アンレー」などの治療もあります)。

 詰め物・被せ物は、大きく分けると「金属」「非金属」に分類できますが、少量の切削で済む場合、多くは「レジン」というプラスチックを詰めることになります。現在、多くの場合「フィラー(混ぜ物)」を入れて強度を増した「コンポジットレジン(略称「CR」)」が使用されています。
 レジンはペースト状のプラスチックで、切削部位に充填して特定の波長の光線を照射して硬化(光重合)させることが出来るので、治療時間が短く、削る量も少なくて済みます(材料によっては化学重合や熱重合のものもあります)。また、白いので目立たず、軟らかいので対合歯を傷つけないという長所がありますが「金属による修復」以上に技量の差が出やすく、吸水性があるため、経年変化によって黄ばんできたり、プラスチックですので、金属などに比べて磨耗や劣化が激しいという短所があります(年月を経たプラスチック製品は折れやすくなったりしますよね)。
 熱い味噌汁を飲んだ後に冷たいお茶を飲んだり、人間は冷たいものから熱いものまで色んなものを食べますので、口内環境は過酷と言えます。その分、口内の詰め物、被せ物は劣化しやすい環境にあると言え、歯科材料の中でも特に経年変化しやすいレジンにとっては口腔内は厳しいといえます(さらに、あらゆる物質は熱膨張を起こしますが、熱膨張率は物質によって違うので、温められたり、冷やされたりを繰り返すと歯から外れやすくなります。これはレジンに限らず、全ての詰め物・被せ物に言えることです)。

 「磨耗・劣化が激しい」というレジンに対して「強度と耐久性を兼ね備えたもの」として最初に挙げられるのが金属でしょう(歯科金属は「被せ物〔クラウン〕」に絞ってお話します)。歯科金属としては、ニッケルクロム合金、銀合金、銀パラジウム合金、金銀パラジウム合金などがありますが、機能的に理想的な被せ物は「金歯」だと言われています(よく問題になる「アマルガム」は1980年代までは一般的でしたが、一部の歯科を除いて、現在は殆ど利用されていません)。
 「金歯」と言っても、純金だと軟らかすぎるので、純金(24金)に他の金属を加えた18金か20金の「金合金」が「金歯」として用いられています。金歯は展延性に優れている(延びる)ので破損しにくい上、その軟らかさから、加工がしやすいので失敗が少なく(「技術を要求されにくい」と言えます)、咬んだ時、歯に優しいのです。おまけに「生体為害性が低い(身体への毒性が低い)」とされていて、歯科金属の中ではアレルギーを起こしにくいのですが、見た目が良くないので利用率は少なくなっています。
 金に白金を加えた「白金加金合金」の金歯は、色が銀色に近くなっていて、金歯ほど見た目が悪くないのですが、通常の金歯と同様、保険が利かないせいか、利用率は少なくなっています(白金加金合金の金歯は、通常の金合金の金歯より少し硬めですが「最も良い歯科金属」に挙げる歯科医は少なくないようです)。

 「生体為害性が低い(身体への毒性が低い)」と言われる「金」に対して「生体適合性・親和性が高い(身体と仲が良い)」と言われるのが「チタン」です。チタンが人工関節などに使われるのは、金属アレルギーを起こしにくい「生体為害性の低さ」に加え、普通の金属が身体に「異物」として扱われやすいのに対して、チタンの場合は骨が強固に結びつこうとします(「骨結合=オッセオインテグレーション」と言って、人体から除去しなければならない時は大変だそうです)。つまり、身体と仲が良い(親和性が高い)のです。
 元々、チタンはイオン化傾向の大きい「サビやすい金属」なのですが、他の金属と違って、酸化被膜を形成した「不動態」になることでサビにくくなっています(要するに、安定したサビを持たせることで、それ以上、サビない状態になっているのです。溶出しにくいので金属味がしにくい)。この酸化被膜が溶出(イオン化)を邪魔するので歯科金属の中では最もアレルギーになりにくいのですが、硬過ぎて対合歯を磨耗させやすいという問題点があります。また、保険も利かず、扱っている歯科医院が少ないので、あまり普及していません。

 歯科金属で最も普及しているのは、やはり保険が利く「銀歯」でしょうね。
 よく言う「銀歯」とは「銀製」ではなく、銀色に見える金属の歯の俗称ですが、JIS規格で金が12%、パラジウムが20%と定められた「金銀パラジウム合金」のものが多いようです(「金パラ」と略称されることが多いようですが「パラ」「金銀パラ」などとも呼ばれます。金と銀の割合はJIS規格で決まっているものの、その他の成分は製品によって異なりますが銀が50%程度、銅が20%程度含まれています。「ニッケルクロム合金」も保険適用の金属ですが、金属アレルギーの原因になりやすいため利用率は少ないようです。銀合金製の銀歯もありますが利用率は低いようです)。
 金パラは歯よりも硬いため対合歯を磨耗させやすく(これはチタンでも同じです)、イオン化(溶出)によって歯ぐきが黒ずんだり金属アレルギーの原因になるなど安いこと以外に利点はないと言って良いと思います。基本的に、日本の歯科では「パラジウムアレルギーは少ない」とされていますが「リンパ球幼若化試験(LTT)」という検査(「リンパ球刺激試験」ではありませんので念のため)を行うと、金パラに対して約半数の人に陽性反応が出るとしている歯科グループもあり、アマルガムと同じく、避けた方が良い歯科金属の代表だと思います(リンパ球幼若化試験で半数の人に陽性反応が出るということは、パッチテストでは漏れてしまう、アレルギーの人が数多くいるということになります)。実際、欧米では「パラジウムフリー治療」が進んでいて、パラジウムは殆ど使われなくなっているようです(ちなみに、アマルガムの成分の約50%は水俣病の原因となった水銀です。唾液に溶けやすく10年で総重量の約7割になるという報告もあります。水銀は神経毒性が強く様々な症状の原因となります)。

 そして、金属アレルギーの発病を促進するのが「ガルバニック電流(ガルバニックアクション)」です(「ガルバニック=Galvanic」は「直流電流」の意で「ガルバニー電流」とも呼ばれます)。
 アルミホイルや金属製のスプーンを咬んだ時に、電気が走るようにピリッとしたことはありませんか?。この時に感じるのがガルバニック電流です。たまにビリッとするぐらいなら、それほど問題にはならないのですが、自覚できない程度のガルバニック電流が持続的に発生して人体に悪影響を及ぼすことがあるのです。
 レモンに銅板と亜鉛板を差し込んで豆電球に明かりをつけたりする「レモン電池」の実験を見たことはないでしょうか?。銅と亜鉛のように、種類の違う金属が接触すると、電位差が生じて電流が発生します。すると、金属がイオン化して溶け出します。これを電気的な腐蝕「電蝕」と言います(「ガルバニー電池作用腐蝕」「異種金属接触腐食」とも言います)。電蝕はイオン化傾向の大きい金属(卑金属)では特に起きやすくなります(貴金属では起こりにくい)。

 複数の異種金属の詰め物が口腔内に存在すると、導電性の液体である「唾液」を通した間接的な接触によって金属製の詰め物がイオン化します(歯科金属の多くはイオン化しにくい「貴金属」に分類されるものですが複数の異種金属が存在するとイオン化しやすくなります)。イオン化した金属がタンパク質と結合すると体内に蓄積されるようになり、それが免疫細胞に「異物」と認識されて金属アレルギーを発症した場合、口腔内での局所的症状としては口内炎、口角炎、舌炎、口腔扁平苔癬などが起きますし、口腔から全身的症状としては接触皮膚炎、掌蹠膿疱症、顔面湿疹などが起こります(金属と結合した細胞は、いわば「メッキされた細胞」なので、身体にとって異物以外の何物でもありません。金属アレルギーを発症しなくても「疲労感やイライラなどが起こることがある」という主張もあります。ピアスなどによる金属アレルギーも同じメカニズムです)。
 一般的には、金属アレルギーを発症し「歯の詰め物が原因」と判明するまでガルバニック電流が問題になることはありませんが、ある歯科医のグループによると「重度のケースでは、心臓を拍動させるために発生している電流(心電図で計測される電流)の5~10倍(10倍以上とも)ものガルバニック電流が検出される」としており、これが事実であるとすれば、脳の近くで強い電流が発生していることになりますので、これが脳に影響を与えないはずがありませんし(交感神経の緊張など)、溶出した重金属が体内の様々な臓器などに蓄積することになります(金属の種類によって蓄積しやすい部位は異なります。また、この歯科医グループによると、歯科金属は空中の電波「空電」を集める『アンテナ』の働きをしてしまう」ともしています)。

 オーリング(O-リング)テストによって歯科金属と身体との適合性を判断し、アレルギーなどを回避しようとする歯科医も少なくありませんが、私はオーリングについて肯定的ではなく(このような検査において、予期意向をはじめとして、術者側・被術者側の様々なノイズを排除しきれるとは思えません。不覚筋動が安定的に出力されているとは限りませんし)、身体と適合性があったとしてもガルバニック電流が起きやすい環境は良いものとは考えていませんので、基本的には、歯科金属を用いない「ノンメタル(メタルフリー)治療」が良いと考えています(また、何かに対してのアレルギーが起きると「アレルギーマーチ」と言って、他のものに対してもアレルギーが起きやすくなるので、現在は問題なくても、将来的にアレルギーが起こる可能性があります)。どうしても金属を使わなければならないなどの場合に使うのは仕方ありませんが、基本的にはパッチテストなどの客観的検査を行うべきだと思います(パラジウムなどは反応が遅いことがあるようなので注意が必要です。※リンパ球幼若化検査を受けるのは難しいと思いますので、一般的な検査法として「パッチテスト」を挙げています)。金属製の詰め物を用いる場合の注意点としては「金属の種類を統一する」「金歯(金や白金加金)、あるいはチタンにする」ことが挙げられると思います(但し、醤油や乳酸菌飲料、イソジンなどでも金属の溶出は起こりますので問題が起きないとは限りません)。
 農作物や魚介類などに有害重金属が含まれていたら大騒ぎされるのに、口腔内に入る重金属については殆ど問題にされません。消化器への入口で溶出した金属は、腸に届く前に吸収される分を除いて、確実に腸内に届くと考えて良いでしょう。特に女性の場合、普段からピアスやネックレスなどの金属に触れていることが多いので、歯科金属によるアレルギーが起きやすい可能性がありますので(金属感作と言います)、出来る限り「歯科金属を使わない治療」を受けて欲しいと思います。

 すでに口腔内に複数の歯科金属が入っていて、金銭的に余裕がないなどの場合、身体に異常がなければ、なかなか歯科金属の除去には踏み切れないと思います。それに、詰め物などでは、除去する際に出る微粒子を吸い込むリスクもあります(そこまで考慮してくれる歯科医は多くないと思います)。
 そんな場合、口腔内の歯科金属を除去するかどうかの1つの目安として、まずは放電器「オーラルテクター(置いている歯科医は殆どないと思うので探す必要があります)」を使って何らかの症状の改善がみられるようであれば歯科金属の除去を本格的に考えなければならないかも知れません(放電器で症状が改善するということは「ガルバニック電流の発生量が多い=金属の蓄積が増えている可能性が高い」ということになります)。
 オーラルテクターを使うと、ガルバニック電流による症状は、その場で改善されるようですが(放電されている間だけの一時的な効果)、蓄積によって起こる金属アレルギーの軽減はみられないと思います。そもそも、金属アレルギーは「遅延型アレルギー」なので、原因となる物質が体内に入り込んだら、すぐに発症する訳ではなく、発症するまでに重金属が体内に蓄積されていることになります。つまり、歯科金属が原因の金属アレルギーや重金属中毒による症状は、口腔内の歯科金属を取り除いたからといって、すぐに症状が改善するとは限らないということです(「デトックス」が必要になるとされています)。
 もう1つの目安になるのが「DMAメーター(モリタ製)」でしょう。これは歯科金属の電位差を測定することによって歯科金属の溶出傾向を知る機械です(DMAメーターを利用している歯科医院も少ないと思いますので探さなければなりません)。

 審美性を含めて、歯科金属に問題が多いために出てきたのがセラミックだと言って良いと思います。セラミックは生体為害性が低く、歯垢が付着しにくく、色調変化がないという長所があります(色調変化がないので、加齢で他の歯の色調が変わっても、不自然に白いままになるということはあります)。審美性は良いですし、イオン化せず、ガルバニック電流の原因とならない画期的な歯科材料と言えるでしょう(セラミックは陶材とかポーセレンなどとも呼ばれます。「セラミック」「陶材」「ポーセレン」は、それぞれ違うものだという方もおられるようですが、一般的には、そのような厳密な言い分けはなされていないと思いますので、ここでは「セラミック」で統一します)。
 歯科医の中には「セラミックは硬過ぎて、対合歯(上下で向かい合う反対側の歯)を磨り減らしたり、対合歯がチッピングする(欠ける)からダメだ」という方もおられますが、天然歯のエナメル質の主成分であるリンとカルシウムが組成の約90%を占める「クリセラ(九耐デントセラム製)」などは、天然歯に非常に近いセラミックと言えます。

 一口に「セラミック」と言いますが、様々な種類があり、現在のところ(2009年6月)、主なものだけでもエンプレス、エンプレス2、クリセラ、プロセラ、エンジェルクラウン、インセラム、ウォルセラム、ジルコニアなどがあります。
 歯科用セラミックの多くは、組成的には金属に近いのですが、イオン化(溶出)しないため、セラミックそのものに対するアレルギーの心配は殆どありません(但し、接着剤などに金属が含まれていることもありますし、セラミックを装着するための「セメント」に含まれる化学物質でアレルギーを起こす可能性があります。アレルギーのことを考えれば、唾液に溶けない「接着性レジンセメント」が良いかも知れません。接着性レジンセメントは利用率が上がってきているようです。※「組成的には金属に近い」と書きましたが、先に書いた通り、クリセラの組成の約90%はリンとカルシウムです)。

 ここで少しセメントについても触れておくと、用途によって仮着用、合着用、接着用、充填用などがあるのですが、特徴的なものとしては「グラスアイオノマーセメント」や「接着性レジン」、「ドックスベスト(Doc's best)」などがあります。「グラスアイオノマーセメント」は、歯質を強化する「フッ素」を口内で放出して二次カリエス(二次的な虫歯)を予防する効果があり、東京医科歯科大学名誉教授の中林宣男先生が開発した「接着性レジンセメント」は、歯の表層に耐酸性が高い「樹脂含浸エナメル質(中村先生は「人工エナメル質」と呼んでいます)」を作って虫歯になりにくくします。
 「ドックスベスト(Doc's best)」は、銅イオンによって3Mix-MP法のような殺菌作用を持っていて歯髄を温存しやすくするのですが、3Mix-MP法のように薬剤を使わないので耐性菌を作る危険性が低く「銅」自体は体内にミネラルとして存在するものなので、副作用やアレルギーが起こる可能性が低く、3Mix-MP法ほど高い技術力を必要としないので、3Mix-MP法ほど成功率に差がないようです。さらに、時間経過によって薬効が低下する3Mix-MP法と違って、ドックスベストの殺菌効果は永続性があり、再石灰化を促して歯質を回復傾向にするなど、素晴らしいセメント材なのですが、まだ日本の歯科医院では取り扱いが少なく、残念ながら、保険の適用が受けられません(もちろん完全回復する訳ではなく、全ての虫歯に使用できる訳ではないようです)。

 話をセラミックに戻して……セラミック治療に踏み切れない最大の理由は料金にあると思います。材料費が高いのはもちろん、歯科医自身がセラミック治療を行うための高度な治療を学ぶのに費用が掛かりますので当然ではあるのですが、そもそも、自費診療が高額になるのは「材料費のため」というよりも「時間と手間」を掛けてもらうために支払うものです。「時間と手間」なくしては良い仕事は出来ませんので、時間と手間をかけない治療では「値段の高い保険診療」と変わりがなくなってしまいます。保険診療では掛けられない「時間と手間」を買うことが「自費診療」だと言って良いかも知れません。
 その他、広告費など、様々な要素が絡んでくる自費診療の料金、歯科医院によって大きく違います。そこで、料金を抑えるための工夫が生まれてきています。
 その代表的なものと言えるのが「CAD/CAMシステム」という、コンピュータを使った製作システムで人件費を抑えることで価格を抑えた製品でしょう。早くて安価で均質の製品作りが可能になっているものの、残念ながら、高い技術を持つ歯科技工士のハンドメイドには劣るようです(低い技術の歯科技工士のものと比較した場合は、どうなのでしょうか?)。また「均質であること」も、必ずしも「高品質」を意味するものではなく、適合性や精度が高くない製品もあるようです(「ウォルセラム」はCAD/CAMシステムを使ったセラミックの中で最も高精度だと言われています。逆に、CAD/CAMシステムを使った某製品は「ウォルセラムより強度があるけど精度が低い」という評価が多いようです)。歯科に限らず、一般的に「人件費削減」というのは、必ず、どこかにシワ寄せがくるものなので、機材(コンピュータ)をレンタルしたり、購入した費用をまかなうために「安易に治療を進められるのではないか?」という疑問が付きまといます(「コスト削減」は「同品質」のものを作るのに必要な「無駄」を削減するもので、品質を落とすのは「コストを削減した」とは言わないと思います。全ての場合に当てはまるとは言いませんが「人」を「無駄」というのは「何を大切にするか?」を間違っている気がします)。

 では、数あるセラミックの中で何が良いのでしょうか?。天然歯に近いという意味では、組成そのものが天然歯に近いクリセラが良さそうですが、クリセラは靭性(じんせい。粘り強さの意)が高くないようで、奥歯で使うと割れてしまう可能性があります(クリセラは「奥歯用」と書かれていることもありますが、それは「大臼歯の咀嚼圧に耐えられる」という意味より「色調が単純なため、審美的には前歯より奥歯での使用に向く」という意味が強いようです。審美性が要求される前歯では、透明感の高いエンプレスやエンプレス2が良さそうです)。そういう意味で、奥歯にセラミックを使う場合、最も強度の高いジルコニアが用いられることが多いのではないかと思いますが、ジルコニアは硬過ぎて対合歯を磨耗させたりチッピング(欠ける)を起こす危険性が高いという問題点を抱えています(金属より硬いです。「ジルコニア」というセラミックは、模造ダイヤモンドの「キュービック・ジルコニア」と同じ原料から出来ています)。
 「CAD/CAMシステム」を使ったセラミックは、安いものの、フィッティングが良くないものもあるようですが、やはり「安い」というのは魅力だと思います。その中では「ウォルセラム(ウォルセラム製)が良いかな」と思います。ウォルセラムにはジルコニアが約30%含まれていて、奥歯にも耐えうる素材になっているという意味でも良いと言えるかも知れません(インセラムにもジルコニアが含まれています)。また、ウォルセラムは「CAD/CAMシステム」を使ったセラミックの中では最も精度が高いと言われているので、脱落・破損の可能性を減らすことが出来ます。
 何も私は「ウォルセラムが最高」と言いたい訳ではなく「セラミック修復と言えども『割れ』『欠け』が起こる『消耗品』と考えた場合、ある程度のレベルを有しながらも『安い』というのは大きな魅力だと考える」という意味です(腕の良い歯科医・技工士が手がけるなら一生物になる可能性も高いので、その歯科医・技工士が勧める材料を使えば良いと思うのですが、この記事を読まれる全ての方に当てはまる訳ではないので、比較的無難そうな「ウォルセラム」を挙げています。いくら安くても、すぐに「割れ」「欠け」が起こるようでは、結局高くついてしまいますので、ある程度のレベルを有していることは重要です)。

 一般的に「セラミック」に期待されることは「審美性の高さ」なので、金属の上に口外から見える部分にだけセラミックを貼り付けて安価に済ませる「メタルボンド(メタルボンド冠)」という差し歯もあるのですが、私は審美性よりもアレルギーやガルバニック電流など、身体面への影響を重視しますのでオススメしません(メタルボンドは「セラモメタルクラウン」と呼ばれることもあるようです。メタルボンドのようにセラミックを貼り付ける方法に「ラミネートベニア」がありますが、これは審美性を高めるために、自歯の上に付け爪のように貼り付けるもので「治療」というよりは「ホワイトニング」のようなものです。最近では審美性を高めた「ジルコニアボンド」も出てきているようですが、実施している歯科医院は限られます)。

 「セラミッククラウン」の場合でも、土台となる歯の虫歯が重度の場合(抜髄した歯)や、メタルボンドのような差し歯では「土台(コア。「ポスト」とも呼ばれます)」が必要になります。コアには、レジンコア、ファイバーコア、メタルコア(金属製)などがあり、レジンコアと銀合金のメタルコアなら保険適用が可能なのですが(金合金のメタルコアは適用外)、レジンコアは強度が低いですし、銀合金のメタルコアは硬過ぎて、挿入する歯の根っこが割れてしまいやすく、歯ぐきの変色が起こりやすいです。この歯ぐきの変色は金属のイオン化(溶出)によるもので、アレルギーの原因になります(ガルバニック電流の悪影響を考えなければなりません)。
 現在、コアにはメタルコア、レジンコア、ファイバーコアの3種類があるのですが、メタルコアはガルバニック電流の原因となるのはもちろん、硬過ぎるので、装着する際、土台となる歯が割れやすいですし、装着後の咀嚼の際も、しなりのないメタルコアでは咀嚼力が一部に集中して土台となる歯が割れやすいという問題があります(割れた場合、多くは抜歯することになり、土台がなくなるためセラミック治療そのものが成り立たなくなります)。レジンコアはガルバニック電流の原因にはなりませんが強度不足ですし、ファイバーコアしか選択肢が残されていないのが現状ですが、ファイバーコアは歯科医の技量の差が出やすく、長期的には不安がない訳ではありません(ファイバーコアを扱っていない歯科医院もあるようです。なお、最近はハイブリッドコアも出てきているようです)。でも、ファイバーコアは、口内で作ることが可能なので(直接法)、切削を最小限に出来ますし、万一、再治療が必要になったとしても、メタルコアよりも除去が簡単なので、現時点ではファイバーコアがベターな選択と言えるかも知れません(ファイバーコアは「メタルコアより脱落しやすい」という欠点を持っているから「メタルコアよりも除去が簡単」なのです。脱落しやすいとはいえ、土台となる歯を割りやすいメタルコアより良いと思います。脱落した場合、コアを作り直す歯科医と再接着で済ませる歯科医がおられると思いますので方針を訊いてみるのも良いかも知れません)。

 患者側が「オールセラミック」と言っても、歯科医側としては、ここまで書いてきたようなことを念頭においていないので「審美性を良くしたいんだな」と受け取ることも少なくないと思います。セラミックの中の芯材「コーピング(フレーム)」や「コア(土台)」に金属を使う場合もありますし、セメントなどに金属を含んでいる場合もあるようなので「オールセラミック」という言葉では「ノンメタル(メタルフリー)治療を受けたい」という意思が伝わらない恐れがあります。ノンメタル(メタルフリー)治療を希望する時は「ノンメタル(メタルフリー)治療でお願いします」と言った方が良いでしょう(コーピング材は主に、酸化アルミニウム製の「アルミナ」と「ジルコニア」の2種類があるのですが、ジルコニアが良いと思います。先に「ジルコニアは硬過ぎる」と書きましたが内部材料として使う分には問題ありません)。

 一口に強度と言いますが、そこには硬度(モース硬度・ビッカース硬度)・剛性(抗変形強度)・靭性(じんせい。粘り強さの意)など様々な要素が関わってきますが、その中で、セラミックの最大の欠点となっているのが「靭性」が低いことではないでしょうか?。金属製の食器を落としても割れませんが、陶器を落とせば割れてしまうように「硬いけれども強さがない」のです。そのため、セラミック製の被せ物をする時は、土台となる歯を大きく削らなければなりません。健康な部分までも削らなければいけない訳です。薄くても強い金属と違い、セラミックは薄いと直ぐに割れてしまうので、厚みを持たせることで強度を確保するのです(対合歯が金属の詰め物・被せ物をしている場合は割れやすくなります。また、奥歯にはセラミックを利用しない歯科医もいるようです。歯ぎしり癖のある人の場合、セラミックの利用は避けた方が良いでしょう)

 セラミックが普及しない理由を考慮して生まれたのが、レジンにセラミックなどの「フィラー(混ぜ物)」を加えた「ハイブリッドセラミック」と言って良いでしょう(「硬質レジン」と呼ばれるものもレジンにセラミックを加えたものですが、ハイブリッドほどの含有量はなく、レジンとハイブリッドの間に位置するものが「硬質レジン」と考えれば良いと思います)。
 「ハイブリッドセラミック」は「ハイブリッドレジン」と呼ばれることもあります(「セロマー」と呼ぶこともあるようです)。「ハイブリッドセラミックとハイブリッドレジンは違うものだ」とか「レジンの含有量が多いものを『ハイブリッドレジン』と言い、セラミックを多く含むものを『ハイブリッドセラミック』と言う」という歯科医もおられますが、基本的には同じものと考えて良いようです(一部での言い分けを大部分の歯科医に持ち込んでも仕方がありません)。
 レジンとセラミックの複合体である「ハイブリッド」は、セラミックの最大の欠点とも言える「硬過ぎる」「割れやすい」という欠点を改善していますが、レジンの変色しやすさや劣化の激しさ、プラークが付着しやすいことなどが克服された訳ではなく、基本的に、ハイブリッドの欠点はレジンの欠点を引き継いでいると言って良いと思います。
 でも、セラミックをレジンに混ぜ込むことで、セラミックには真似の出来ないことが1つ可能になっています。それは歯に盛り付けて成型する「ダイレクトボンディング」という方法が可能になったことです(範囲が大きい場合は適用外)。ダイレクトボンディングという方法自体はレジンでも行われていますが、ダイレクトボンディング用のハイブリッドセラミックを用いることで、コンポジットレジンや硬質レジンでは強度不足で使えなかった部位にまで利用できるようになっています。保険は適用されなくても、強度と簡便性の幅が広がったことは好ましいと言えるでしょう(審美性や耐久性は歯科医の技量に大きく左右されます)。

 ハイブリッドセラミックにも色々なものがあり、現在のところ(2009年6月)、主なものだけでも、グラディア、エステニア、ベルグラス、パールエステ、アートグラス、プレミス、プレミスインダイレクト、シンフォニーなどがあります。
 これらの素材は、透明感などの審美性を重視したものや、硬さ、強さを重視したものなど、素材によって大きく違うのですが、ハイブリッドの中で、最も利用されてきたのがグラディアとエステニアです。グラディアは最も軟らかい部類、エステニアは最も硬い部類のハイブリッドとして信頼感があると言えます。現在、グラディアは改良版の「グラディア・フォルテ」、エステニアは「エステニアC&B」という改良版が出ています(エステニアC&Bについては硬過ぎるという指摘もあります)。

 先に「基本的に、ハイブリッドの欠点はレジンの欠点を引き継いでいる」と書きましたが、これは、多くのハイブリッドが「従来のレジンにセラミックの混ぜ物をしたもの」だからですが「従来のレジン」を使っていないハイブリッドが1つあります。「シンフォニー」です(住友3M製「Sinfony」)。
 シンフォニーは従来のレジンではなく、新素材のレジンを使ったハイブリッドなので「従来レジンの発展形」である他の素材とは一線を画していると言えます。従来のレジンと違って、審美性が高く、歯垢が付着しにくいという特徴を持っているようです。おまけに、弾性が高いので対合歯を傷めにくいですし、欠けにくく割れにくいのです。
 このように書くと「完全無欠」のように思えますが、硬化(重合)させる際の「重合収縮が大きいのではないか?」とか「成型が難しいのではないか?」といった、技術者側の問題点が残されている可能性もあるので、患者側にとってのメリットが技術者側のメリットにつながっているかどうかは分かりません(私には分かりませんが、検索してみると「嫌いだ」とする技術者もおられるようです)。技術者側のメリットにならなければ、結局は「製品の精度・出来映え」として患者側に跳ね返ってきますので、技術者のメリットも重要な要素になると思います。また、新素材だけに、どのような経年変化をたどるのかは誰にも分からないことを付記しておきます。

 ハイブリッドの一番の短所は「歴史が浅い」ことかも知れません。長期的な経過が分からないので、その製品が本当に良い素材なのかどうか誰にも分からないのです。「レジンとセラミックを足して割ったものがハイブリッド」と言えると思うのですが、悪く言えば中途半端なのです(数年経つと、ハイブリッドに含まれるレジン自体の強度が大きく落ちてしまうようです)。
 古くからある素材は、物性や経過が分かりやすいので、予後が予測しやすく、安心感・信頼感があるので、多くの歯科医に支持されてきた結果、現在も用いられているのです。発売後、製品の問題が判明することも少なからずもあるようで「新製品の良さ・悪さ」は時間が経たなければ分からないということです。

 詰め物・被せ物に使う素材は何が良いのか?。近い将来、東北大学の厨川常元教授が研究している「歯の成分吹き付け再生」や、FAP美白歯科研究会の山岸一枝代表らが発表した「エナメル質を再生させるペースト」などが歯科治療の理想を実現してくれるかも知れませんが、現時点では、残念ながら「これなら万全」と言えるものは無いと言って良いと思います。ですから、オススメできる素材はありません。
 金属の詰め物・被せ物を得意とした歯科医・技工士にノンメタル治療を希望しても上手くいかないことが多いでしょうし、詰め物・被せ物の素材が良くても接着剤が悪ければ取れてしまうことにもなります。どんなにいい材料でも、特性をよく知っていなければ使いこなすことは出来ないので、長持ちするかどうかは材料よりも歯科医の腕に掛かっていると思います(「セラミックを触ったことのない歯科医に無理強いしても上手くいかない」というシーンをイメージすれば分かりやすいでしょう。結局は医師選びが最も結果を左右すると思います。さらには、歯科医の得意・不得意だけでなく、歯科医院と提携している歯科技工士の得意・不得意にも左右されます)。「理論的にベストな選択」が、結果として良いかどうかは別問題なのです。結局「良い材料」は治療後を左右する1つの要素に過ぎず(大きな要素ではありますが)、患者自身のケアなくしては、どんな材料を使っても良い結果は得られないでしょう。

 そもそも、セラミックもハイブリッドも「一生使えるもの」ではないと考えて下さい。割れ・欠けが起こる消耗品なのです。うまくいけば一生物ですが、ひょっとしたら数年でダメになるかも知れません。アレルギーや経済力、価値観によって「ベスト」は違うと言って良いと思います。「ベスト」を目指すより「ベター」を目指す方が良いと言えるかも知れません。高額な消耗品を買うハメに陥らないためにも早期治療が大切なのです。

 必ずしも、希望の材料を使用している歯科医、希望の治療を実施している歯科医が身近にいるとは限りませんので、どこかで妥協が必要になると思います(「ベストでなくてもベターで良い」と考えるしかないでしょう)。「自分が思い描く最上の治療」を得るための歯科難民が増えているようですが、歯科治療に限らず、人生の全てにはリスクが付きまといます。「(歯科治療による)リスクを負いたくない」というなら「全て抜歯しなければならない」と言って良いと思います。そもそも「歯科医院」という場所は「悪くなってから行く場所」ではなく「悪くならないように(予防のために)行く場所」だと認識を改めるべきで、虫歯が進行してから「リスクのない最善の治療」というのは無理があると言えます。天然歯に勝る材質はないのですから、ここに書いてあることは「『最善』ではなく『次善』を考えるための判断材料」だと考えて欲しいと思います。

 ここで様々な歯科材料を挙げたのは「これら全てを取り揃えている歯科が良い歯科である」などと言いたいのではありません。ハッキリ言って、ここに挙げた全ての材料を取り揃えている歯科など存在しないと思います。患者にしてみると「良い歯科医院探し」というのは、頭を悩ませることの1つで「歯科材料を知る」というのは選択基準の1つになると思いますし、知識をつけることは「患者力」を上げることにつながると考えています。
 上記に挙げたような材料を全く使わず、昔からある材料を、ずっと使っておられる歯科医もおられると思います。最新の材料が良いかどうかは時間が経たなければ分かりません。数年後には消えてしまう「最新の材料」も少なくないのです。そんな中、昔からある材料を、ずっと使っておられる歯科医というのは「安心できる材料だけを使いたい」と考えているのかも知れません。そういう歯科医は、誠実な仕事をされていることと思います。そういう場合「最新の材料を使って中途半端な仕事をする歯科医」の治療より、良い結果が得られることが少なくないと思います。ですから「最新の材料を使っていない=悪い歯科医」ではないことを記しておきたいと思います。

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 虫歯が進行した歯では根管治療(「歯内療法」とか「エンド治療」とも呼ばれます)を行う必要があります。この根管治療は歯の保全には重要な治療なのですが、保険治療で充分な治療をしている歯科医院は少ないといわれています。保険点数が低く、利益が低過ぎるため、手をかけると赤字になってしまう上に「時間がかかる」「面倒」「難しい」ことが、その理由です。 歯内(根管)の形は千差万別で、湾曲していたり枝分かれしていたりして複雑な構造になっているにも関わらず、直接、目で見ることが出来ないので、深くまで治療しなければならない場合は非常に高い技量が必要になります。ですから、根管治療を充分に行おうとすると、何度も歯科医に通わなければならない上(長ければ1本の歯だけで1~2ヶ月。或いは、それ以上)、長時間、口を開けることを強いられるので、疲れますし、神経をいじると数日間痛みが残ることがあるので患者さんに嫌われ、他の「神経をいじらない歯科医、あるいは神経を抜いてしまう歯科医(当然、痛みは残らない)」と比較されて「腕が悪い」と評価されてしまいます(抜髄の保険点数は高いので、残せる神経でも、抜いてしまった方が歯科医としては儲かります)。
 つまり、腕が悪く、非良心的な歯科医は根管治療をやりたがらず、根管治療をしなければ、痛み・治療時間・治療期間が少なく済むので患者さんからは受けがいいのに対し、良心的で腕が良い歯科医は、真剣に、丁寧に、時間をかけてやるので受けが悪いという、何とも割に合わない治療なのです(ですから、患者による歯科医クチコミサイトなどは参考になりません)。
 おまけに、治療期間が長引くので「治療を長引かせて儲けようとしている」と誤解されやすいのです。ですが、先に書いた通り、根管治療における保険点数・報酬は非常に低いので(数百円程度)、治療期間を長引かせたところで、利益は上がるどころか下がってしまいます(長期間に亘って根管治療を行うよりも抜歯・抜髄した方が利益は上がるようです。根管治療をおろそかにした方が、楽だし儲かるのです)。抜歯・抜髄する「短時間・短期間治療」と、時間のかかる「歯の保全治療」と、どちらが良いですか?。長時間・長期間かけて治療を行っている歯科医は、歯を大事にしてくれる「良心的な歯科医」と言えるのです(当然ですが、抜歯・抜髄しなければならないこともあります。特に、親知らずについては抜いた方が良いケースが少なからずあるようです)。

 根管治療が不充分だと、いくら詰め物・被せ物を完璧に装着したとしても虫歯が再発する可能性は高くなります。「治らない」「すぐ再発する」というのは根管治療が不充分なことが多いようです。根管治療は難しい上、割りに合わない治療なので、歯科医としては、すぐに抜髄(神経を抜く)したり抜歯したいところかも知れません。
 患者としては、抜歯は避けたいところですが「神経を抜く」と言われても、それほど抵抗感がない人は少なくないのではないでしょうか?。一般には「神経を抜く」と言いますが歯髄にあるのは神経だけでなく、血管も通っていて、歯に栄養を供給しています。歯は死んだ組織ではなく、生きた組織で、抜髄すると死んでしまうのです(神経を抜いた歯のことを「失活歯=しっかつし」や「無髄歯」と言います)。死んだ歯は、生木が枯れ木になるように、もろくなって、次第に茶色っぽくなったり、黒っぽくなってきます。それに、神経が無くなると感覚も無くなりますので、食べ物の食感が減少したり、虫歯が発生しても痛みを感じないために発見が遅れ、気づいた時には、かなり悪化しているということにもなります。

 根管治療はマイクロスコープ(巨大な顕微鏡)を用いることで精度が上がります。アメリカの根管治療専門医の殆どは、根管治療にマイクロスコープを用いるそうですが、日本国内では普及率が低く、根管治療の体制が整っているとは言えない状況のようです。拡大鏡(メガネのように頭部に装着する「小型双眼鏡」「小型単眼鏡」のようなもの)を使って根管治療をしている歯科医院は良い方で、多くの歯科医院では肉眼で治療を行っており、先に書いた通り、手を掛けられていないのが現状です。治療を受ける側としては根管治療にも積極的であって欲しいと思いますよね?。根管治療専門医は「日本歯内療法(根管治療)学会 http://www.jea.gr.jp/」で探すことが出来ますので参考にして下さい(リンククッションが切れている場合はURLをコピペしてみて下さい)。必ずしも学会認定医の腕が良いとは限らず、認定医以外でも腕の良い歯科医はおられると思いますが、患者の側が歯科医を選ぶ際の1つの選択基準にはなると思います。

 「根管治療」は抜髄(神経を抜く)ことに伴うものです。そういう意味で、根管治療においては「3Mix‐MP法」のような殺菌温存療法は有力な選択肢になるかも知れません(抜髄を必要としない程度の虫歯に対する治療は3Mix‐MP法以外の治療が良いと思います。なお、3Mix‐MP法が「痛くない」「削らない」方法だというのは誤りです)。ただ、3Mix‐MP法の術式は非常に難しく、丁寧な作業を必要とするために使いこなせる人は多くなく(治らないケースが少なくない)、改良版とも言える方法も出てきているようですが、認知度は低く、実施施設も少ないです。わざわざ技術に改良を加えるぐらいなら、3Mix‐MP法より、耐性菌を生むこともないヒールオゾンのような殺菌治療の方が良いような気がします(機材が高価なため導入施設が少ないという問題点があります。適応範囲外の場合、抜髄が必要になります)。

 ここで「インプラント」についても少し触れておきます。基本的に、私はインプラントはオススメできません。ブリッジは固定感が良いのですが(インプラントほどではないにせよ)、橋渡しする土台となる、隣の健全な歯(隣在歯)を削らなければなりませんし、入れ歯は不安定……他に良い選択肢があるかと言えば、無いのですが……(ブリッジの土台になる歯の寿命は短くなります)。
 そもそも歯を失う原因は何でしょうか?。多くのケースは歯周病ではないかと思います。実際のところは知りませんが、虫歯による抜歯だとしても、抜歯しなければならないほど虫歯が悪化したということは、あまりブラッシングが出来ていない部位だということです。つまり、それなりに歯周病も進行していると考えられるのです。ということは、インプラントを入れたとしてもインプラント周囲炎を発症する可能性が高いわけです。
 そもそも、インプラントの多くは外国製で、日本人に合わないものが多く(日本人向けの製品も出てきているようですが)、日本のメーカーも数社あるのですが完成度は外国製には及ばないようです(実用的に問題がある訳ではないようですが。ちなみに、日本製の方が安いものが多いようです)。また、インプラントは歯科医の高い技術力を必要とし、うまくいかないケースでは良い咬み合わせを作れないこともあるようですし、食いしばりが強い人ではインプラントを壊してしまうことがあります。。
 そういう意味でもアフターケアが重要になるのですが、各社が激しい競争をしている現在、インプラントメーカーが無くなったりすると、部品交換が出来なかったりアフターケアが受けられないとも限りません。そもそも、部品も改良が重ねられたりすると、互換性がなくなっていないとも限らないのです(私は業者や歯科医ではありませんのでリスクを書くことに専念します。笑。歯科医では、こういうリスクは話してくれないと思うので)。経済的に余裕があり、審美性を重視するのであれば構わないと思うのですが、一大決断で行うのであれば「将来的に不安な不可逆的な手術」というのは避けた方が良いのではないかと思うのです。
 「上下顎に左右7本ずつ、合計28本の歯が揃っていなければ身体に悪影響がある」という考え方がある一方で、正中線から数えて5本目の歯(第二小臼歯)までが左右に残っていれば大きな問題を起こすことは少なく、「特に問題が生じないようであれば」インプラントや入れ歯などによって歯を補充することの方が、経済的・身体的デメリットが大きいのではないかという考え方(短縮歯列咬合)もありますので、強い違和感などがないようであれば、決断を急がずとも、信頼できる歯科医と相談して決めて欲しいと思います(短縮歯列咬合については日本の歯科界では否定的意見が多いようですが、すでに時間が経過していて問題がないケースでは、それを否定することもないと思います。笑。もちろん、全ての人が短縮歯列咬合でも問題ないとは限りません。脳への影響のように、影響が見えにくい部分もありますし、さらなる予後のことは分かりません)。
 インプラントを入れる場合は「インプラント学会 http://www.shika-implant.org/」の認定医かどうかというのが、歯科医選びの基準の1つになるのではないでしょうか?(認定医以外にも腕の良い医師はおられると思いますが、患者が歯科医を選ぶ基準は、なかなかないと思うので「認定医」を判断基準にするのが分かりやすいかと思います)。

 ちなみに、何かの事故で歯が抜けたり折れたりした場合、水で洗わずに(汚れが酷い場合でも水で洗うのは10秒以内。牛乳か生理食塩水で洗うのがベスト。歯の根には触れないように)、牛乳に浸けたままにするか頬と歯茎の間に入れたままにして歯科医院へ急いで下さい(乾燥すると復元[再植]できなくなるので、牛乳や唾液など、体液に近い液体で乾燥を防ぐようにします。誤って飲み込まないように歯の外に入れるか舌の下に入れます。タイムリミットは30分以内、最長2時間です。最近は歯牙保存液も市販されています。但し、乳歯の復元は難しいようです)。

------------------------------歯周病------------------------------

 歯周病とは「歯肉炎」「歯周炎」「歯槽膿漏」など、歯の周りの組織(歯茎、歯槽骨など)に起こる疾患の総称で、専門的な言葉で「ペリオ(perio)」と呼ばれたりもします(一口に「歯周病」と言いますが様々な分類があります)。歯肉のみで起きているものを「歯肉炎」、歯根膜や歯槽骨まで広がったものを「歯周炎」、膿が出るようにまで進行したものを「歯槽膿漏」といい、2005年の厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によると、軽度のものを含めれば25歳以上の約8割が歯周病とされています(10代で始まります。単純には「歯肉炎→歯周炎→歯槽膿漏」へと悪化するものと考えて良いと思います。高齢になると歯周病率が下がるのですが、これは歯が無くなることによるものです)。
 本来、歯周病という言葉は「歯の周りの組織に起こる疾患の総称」なので、広義には「歯の周囲組織に起こる疾患全て」ということになるのですが、ここでは一般的に「歯周病」と呼ばれる時に意味している「歯肉炎(単純性歯肉炎)」「歯周炎・歯槽膿漏(辺縁性歯周炎)」を「歯周病」として扱うものと考えて下さい(基本的に「複雑性歯肉炎」については取り上げません。妊娠性歯肉炎については一部取り上げます)。
 実は、歯周病も詳しいことは分かっていないようです。「治療すると○○菌はいなくなるので、○○菌が関与していることは間違いない」などという主張を見ることがありますが、虫歯の場合と同じように「多く検出される菌」が必ずしも直接原因とは言えず「歯周病になると増殖する(歯周ポケットが深い環境に棲みやすい菌が増えた)」可能性もあり「歯周病菌」と呼ばれるものが必ずしも「歯周病の原因菌」ではないかも知れません(増殖した菌が悪化させているのではなく、歯周病菌は酸素を嫌うので「歯周ポケットが深い環境を好む菌が、深い歯周ポケット内に増えただけ」の可能性がある訳です。よく歯周病に関して「○○菌は○○に関与する」といった記述を見かけますが、それほど確定的なものではなく、歯周病の正確な病理は、まだ明らかではないようです)。いてはいけない場所に菌がいる「外因感染」では、いてはいけない場所にいる菌に対して「この菌が病因である」という論理が成り立ちますが、内因感染では「菌がいてもおかしくない場所に、いてもおかしくない菌が沢山いる」というだけなのですから、それは病因証明にはなりません。内因感染症は外因感染症ほど因果関係が明瞭になりにくいのです。

 現段階では、歯周病の進行具合と、患部で増殖する菌の量などの統計的データによって、歯周病菌は「レッドコンプレックス」「オレンジコンプレックス」「イエローコンプレックス」「グリーンコンプレックス」「ブルーコンプレックス」「パープルコンプレックス」の6種類に分類されていて(Socranskyの分類。資料により異同あり)、多くの学者の間で、強い関与が疑われる菌として、概ね、意見が一致しているのがレッドコンプレックスに分類されている「ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis.以下、Pg菌)」「トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola.以下、Td菌。運動性の高い「スピロヘータ」という菌の1種で「免疫抑制に関与している」という発表もあります)」「タンネレラ・フォーサイセンシス(Tannerella forsythensis.以下、Tf菌。以前はBacteroides forsythusと呼ばれていたようです)」の3種で、重度の歯周病から必ず検出されるとされています(前記の通り、重度の歯周病から検出されるからといって「重度の歯周病を起こす菌」ではなく「重度の歯周病環境で繁殖する菌」の可能性もあります)。
 レッドコンプレックスは重度の歯周病患者、オレンジコンプレックスは中程度の歯周病患者、黄色、緑、青、紫の菌群は健常な人からも検出されることが多いことから、一般的には、最も関与が疑われるのがレッドコンプレックスに分類される菌、その次がオレンジコンプレックスに分類される菌とされているのですが、レッドコンプレックスについては異論は少ないものの、それ以外に分類された菌については、レッドコンプレックスの3種とプレボテラ・インターメディア(以下、Pi菌)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(以下、Aa菌)を加えた5種(Pi菌を除いた4種の場合や、プレボテラ・ニグレセンスを加えた6種の場合もあります)を歯周病における重要な菌として挙げているケース、イエローコンプレックスよりグリーンコンプレックスの方を上位に位置づけていると思われるケースなどがあり、異論があるようです。

歯周病菌の分類(Socransky.資料により異同あり。代表的なものを抜粋しました。媒体露出の多そうなものには日本語表記をつけました)

●Red complex
Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス=Pg菌)
Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ=Td菌)
Tannerella forsythensis(タンネレラ・フォーサイセンシス=Tf菌。旧名:Bacteroides forsythensis=バクテロイデス・フォーサイサス=Bf菌)

●Orange complex
Campylobacter gracilis
Campylobacter rectus(カンピロバクター・レクタス)
Campylobacter showae
Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア=Pi菌)
Peptostreptococcus micros
Prevotella nigrescens(プレボテラ・ニグレセンス)
Streptococcus constellatus

●Yellow complex
Streptococcus gordonii
Streptococcus intermedius
Streptococcus mitis
Streptococcus oralis
Streptococcus sanguis

●Green complex
Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス=Aa菌。旧名:Actinobacillus actinomycetemcomitans=アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス)
Capnocytophaga gingivalis
Capnocytophaga sputigena
Capnocytophaga ochracea
Eikenella corrodens

●Blue complex
Actinomyces species

●Purple complex
Actinomyces odontolyticus
Veillonella parvula


 基本的に「歯周病」は読んで字のごとく「歯の周り病気」なので、歯肉や歯槽骨を侵蝕する病気と言えます。上記の通り、主役となる菌は特定されているとは言いがたいのですが、基本的には「歯周病の原因は歯周病菌」だと考えられています。では、虫歯を起こす菌と歯周病菌では何が違うのでしょうか?。
 一般的に、虫歯の原因として最も関与が疑われている「砂糖」を口にする機会が殆どない発展途上国の人達には、虫歯が少ないですが、大人の口を見ると歯が抜けてしまっているケースが多いようです。これは、虫歯菌が「糖」をエサにしているのに対し(解糖系)、基本的に、歯周病菌は「タンパク質」をエサにしていることによるものです(非解糖系)。虫歯が1本もない人でも、歯周病が悪化すると、最終的には歯を失うことになるのです(よく「虫歯・歯周病の原因はプラークです」と言われますが、虫歯の原因菌と歯周病の原因菌は別だと書いた通り「歯肉縁上プラーク」と「歯肉縁下〔歯周ポケット内の意〕プラーク」では、構成する菌が全く異なっています。プラークが石灰化して出来る「歯石」も歯肉縁上と歯肉縁下では異なっていて、唾液で石灰化が促される「歯肉縁上歯石」は白っぽいのに対し、血液で石灰化が促される「歯肉縁下歯石」は茶褐色をして、歯肉縁上歯石より強固に付着する傾向があります。但し、血液によって石灰化が促された「歯肉縁上歯石」は「茶渋やタバコによって歯が着色されている」ように見えることがあります)。

 歯周病菌が出すタンパク質分解酵素「プロテアーゼ」は歯根膜を溶かし、歯周病菌が出す毒素(内毒素)「LPS(Lipopolysaccharide=リポポリサッカライド)」は歯肉を傷害して炎症を起こします(「ビタミンCが歯周病に効く」というのは、ビタミンCには歯根膜のコラーゲンを修復する作用があるためです)。歯と歯肉の間の歯肉溝から出てくる「歯肉溝滲出液(GCF=しにくこうしんしゅつえき)」には白血球をはじめとする免疫物質が含まれていて、歯周病菌が侵入してくると、身体は歯周病菌を排除しようとして免疫反応が起こります。この時に起こる炎症で歯肉が腫れて出血が起こるのが歯肉炎です。免疫は歯周病菌を退治しようとするのですが、歯周病菌は免疫に対して抵抗性を持っているため、うまく退治できません(「LPS」は免疫細胞にとって感知しやすい「感染」を示す物質なのですが、歯周病菌の細胞壁の外にある「莢膜=きょうまく」の多くは糖で出来ているため、免疫は「糖」と勘違いしてしまい、歯周病菌を認識しにくいのです)。そして、免疫をすり抜けた歯周病菌が歯肉内縁上皮を通って体内に入ると、歯周病菌が及ぼす悪影響は全身に飛び火していきます。

 歯周病と言うと口腔に限局した病気のように思われますが「子供を1人産む度に歯を1本失う」と言われるように、歯周病と身体は密接な関係にあります。
 妊娠すると「プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)」や「プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)」といった歯周病菌が増殖しやすくなります。思春期や月経時、妊娠時に体内の女性ホルモンが増えると、歯肉溝滲出液に含まれる女性ホルモンも増えるので、女性ホルモンを栄養源にして発育が促進する、これらの菌が増殖して歯周病が進行しやすくなるのです(思春期性、月経周期性、妊娠性などの歯肉炎は「複雑性歯肉炎」と呼ばれます)。
 これは全身から口腔に悪影響を及ぼして歯周病が悪化する例ですが、逆に、口腔の歯周病が全身に悪影響を及ぼすこともあります。
 単純には、唾液や飲食物などを飲み下す(嚥下=えんげ)時に、口腔内の細菌が唾液や食べ物などと一緒に、食道から胃へと流れていかずに、誤って気道へ入ってしまうことで起こる「誤嚥性肺炎」は分かりやすいかと思いますが、身体の内側から問題を起こしてしまうことが少なくないのです(唾液や飲食物などの気管への流入を防ぐ「喉頭蓋」というフタの働きが衰え、セキ反射も低下した高齢者では起きやすいです。むせやすい高齢者は、頻繁に気管内に食べ物が入っていると考えられるので要注意です。寝たきりの人の口腔内ケアは肺炎予防に役立ちます)。
 歯面に接している歯肉内縁上皮の血管は多孔牲血管(有窓性血管)になっていて、ここから歯肉溝滲出液が滲み出てきます。血管に歯肉溝滲出液を滲み出させるための穴が開いているのです。歯周病菌は、この血管の穴を通って血液中に入り込み、全身を回ります。

 口腔内では歯根膜を溶かしていたタンパク質分解酵素「プロテアーゼ」が血中で産生されると、血液中の血漿が凝固して動脈硬化の原因になるので、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まりますし、口腔内では歯肉などに炎症を起こしていた歯周病菌の毒素「LPS」は、脂質代謝異常によって血中のコレステロールや中性脂肪を増加させて脂肪組織や肝臓に脂肪沈着を促進しますので、肥満や脂肪肝、強いては「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」の原因となります(「太りやすい」という人は歯周病が関係している可能性があるかも知れません)。
 またマクロファージが「LPS」に刺激されてプラスタグランジンE2(PGE2)やTNF-αなどの生理活性物質(サイトカイン)を過剰に産生すると、血管を変性させたり(動脈硬化の原因)、血小板を凝固させて「血栓」を作ったりしますし(脳梗塞、心筋梗塞の原因)、妊娠中の女性の場合、子宮を収縮させて早産(低体重児出産)を引き起こしたりもします(正常分娩でも羊水中のプラスタグランジンE2によって分娩が誘発されると言われていて、歯周病菌によって、通常よりも早く羊水中のプラスタグランジンE2の濃度が上昇するので早産になりやすくなります。プラスタグランジンE2は陣痛誘発剤の成分としても使われています)。「歯周病と早産に関係は見られなかった」とする複数の報告もあるのですが、早産妊婦の羊水からはレッド・コンプレックスに分類される歯周病菌「ポルフィロモナス・ジンジバリスが検出された」と報告されており、現在のところ、一般的には、その関係性が強く疑われています。

 元々、酸素が苦手な歯周病菌は、血管内に入ると血小板の中にもぐりこんで酸素を避けようとします。歯周病菌が血小板に住み着くと生理活性物質(サイトカイン)「TNF-α」が産生されるようになります。「TNF-α」は、体内に発生した「細菌に感染した細胞」や「腫瘍細胞」などの異常細胞を攻撃するために、免疫細胞「マクロファージ」などが産生する物質(炎症性サイトカイン)なのですが、腫瘍を壊死させたりする効果がある一方で、筋肉細胞や脂肪細胞に作用してインシュリンの働きを低下させる副作用があるとされていて、異常に産生されるようになると、糖尿病の原因になったり、正常な細胞まで攻撃を受けるので、リウマチや骨粗鬆症、動脈硬化、腎臓病などを引き起こしやすくなったりします(更年期にもなると骨を保つ働きが低下するので、骨粗鬆症が急激に進みやすいです)。糖尿病になると血液中の糖分が増える訳ですから、歯肉内の血液の糖分も増えています。これによって歯周組織も悪影響を受けるので「歯周病菌が糖尿病の原因となる」のと逆に「糖尿病が歯周病を悪化させる」という悪循環が起こります(「歯周病を改善することで糖尿病が改善する」と言われているのですが「TNF-αが膵臓の細胞を傷つけて糖尿病を引き起こす」という説もあるようです)。ですから、糖尿病と歯周病は両方の治療を進めていくことが大切となるのです。

 歯周病菌がもぐりこむのは血小板の中とは限らず、心臓の内膜や弁にもぐりこむこともあります。この場合、心不全にもつながる「感染性心内膜炎」、血管壁にもぐりこむと動脈硬化の原因になるのですが、内頸動脈分岐部(脳に血液を送る内頸動脈と、顔に血液を送る外頸動脈の分岐部)のアテローム硬化から、主要な歯周病菌(レッド・コンプレックス)であるポルフィロモナス・ジンジバリスの検出が報告されていて動脈硬化と歯周病の関係性を裏付ける要素となっています(最近は歯周病菌とガンとの関係をも疑わせる事例が報告されています)。
 アテローム硬化(「粥状硬化=じゅくじょうこうか」とも言います)とは動脈硬化で最も多いタイプの動脈硬化で、脂肪性物質が沈着して「プラーク」と呼ばれる隆起物が成長していくのですが、何らかの要因でプラークが破れると、それを切っ掛けにして血栓が出来て、それが脳に詰まると脳梗塞となります。内頸動脈分岐部は全身の動脈の中でも動脈硬化が進行しやすいことが知られていて、全身の動脈硬化の状態の指標となることから、最近の心筋梗塞や脳梗塞の検診では、頸動脈のエコー検査(超音波検査)が重視されています(頸動脈のエコー検査とともに眼底検査なども動脈硬化の指標として重視されます)。

 ここまで、主流説(?)に沿って歯周病と歯周病菌について書いてきましたが「プラークの量と虫歯は必ずしも関係ない」と書いたのと同じように、プラーク(歯周病菌)の量と歯周病も必ずしも関係ありません(歯周病学には「アメリカ学派」と「スカンジナビア学派」があり、この2つの方向性の中に様々な意見・主張の違いがあり、何を以って「主流」と言えるかはハッキリしませんが、便宜上、ここでは以上の説明を「主流説」とさせていただきます。ちなみに、日本ではアメリカ学派が主流です)。歯肉縁下プラークが多くても歯周組織の破壊が少ない人もいれば、歯肉縁下プラークが少なくても歯槽骨の吸収が進んでいる人もいますし(非プラーク性の歯周病)、そもそも歯周病の原因が「感染」であるなら、菌が常に存在して当然の部位である口腔内では「菌の量」よりも、細菌に対しての免疫反応「抗原抗体反応」が重要になるはずです(「抗原抗体反応」はツベルクリン注射の後、赤く腫れる反応と同じで、異物を認識する反応です。新型インフルエンザのように、初めての病原菌に対しては免疫反応が遅れるので症状が重症化しやすいのですが「歯周病に普段から攻撃を受けていれば、歯周病菌への反応は強く表れるはずだ」ということです)。

 実は、歯周病を進行させるのは歯周病菌だけではありません。歯周病菌に対する免疫反応の際、免疫細胞が産生する「コラゲナーゼ(コラーゲン分解酵素)」「エラスターゼ(動脈壁などを構成する「エラスチン」を分解する酵素)」などの酵素によっても歯根膜は溶けてしまいますし、病状が進んでくると、免疫細胞が産生する生理活性物質(サイトカイン)「RANKL」なども骨を溶かす細胞「砕骨細胞」を活性化して歯槽骨を吸収してしまうのです(まだ動物実験の段階で、人体での事実は明らかではありません)。
 歯周病は、歯周病菌だけではなく、身体を守るはずの「免疫」にも進行させられているのです(歯周病菌が産生する毒素「LPS」なども砕骨細胞の活動を活性化するようです。骨が吸収されるのは「細菌から骨を遠ざけるためだ」とする説もあります。いずれにせよ、歯槽骨の破壊の原因は歯周病菌の直接的な働きによるものではなく、身体の細胞「砕骨細胞」によるものです)。
 こういう事実から、歯周病は単なる感染病ではなく「自己免疫疾患(免疫病)ではないか?」という考え方もあります(骨を溶かす細胞「砕骨細胞」を活性化する「RANKL」は、自己免疫疾患である「リウマチ」の関節破壊にも関わっているとされます)。先に「多く検出される菌が必ずしも直接原因とは言えず、歯周病になると増殖する可能性がある」と書いたのは、自己免疫疾患として歯周病が発病した結果、日和見的に棲息していた菌が増殖しやすい環境になり、重度の歯周病で多く検出されるのかも知れないということなのです(「歯周病=免疫病説」も「免疫病」と呼ぶために必要な条件を全て証明できている訳ではないようです。「歯周病は歯周病菌が原因」ではなく「歯周病菌は歯周病の増悪因子」の可能性もあります)。

 歯周病の原因については、歯周病菌だけではなく、咬合・食いしばり・歯ぎしりによって発生するピエゾ電流の関与も疑われますし、咬合・食いしばり・歯ぎしりの影響による骨吸収性疾患とする主張もありますし「カンジダ(カビの一種)が歯周組織を病的な状態にして一次的な原因を作ることで、二次的な原因として歯周病菌による内因感染が起こる」というような「歯周病カンジダ原因説」なども提唱されています(科学的な証拠は少ないながらも、毒性が強く、腎障害などの副作用がある「抗真菌剤〔抗カビ剤〕」を飲まなければならず、歯周病学会などの批判は多いです)。

 ヒポクラテスが「歯周病の原因は歯石である」として以来、明治時代まで「歯周病の原因は歯石である」と考えられてきましたが、歯石を取り除いても歯周ポケットが改善しないことも少なくないようですし、東京医科歯科大学名誉教授で日本咀嚼学会会長の窪田金次郎先生(故人)によると「ナイジェリア人は、あまり歯を磨かないので歯石は多いものの虫歯や歯周病は少ない」としており、歯科学では「歯石は虫歯・歯周病に悪影響」とされているはずなのに「彼ら(ナイジェリア人)の歯石を取り除くと歯はグラグラになる」と報告しており、歯周病について分からないことが多いのが実状です(プラークと歯石除去による歯周病予防について「セルフケアのみの場合」と「セルフケアとプロフェッショナルケアの場合」で殆ど差がないという報告もあります。 「歯石は役に立つものだから大事にしろ」と言いたい訳ではなく(そういう主張もあります)、人間は分かっている範囲で現実を「科学」として体系化しているだけで、「科学」が確固たるものではなく、分かっている範囲で物事を進めているだけだということです。

 仮に「歯周病=歯周病菌原因説」が真実だとしても「歯周病菌」という菌は存在しません。ペストによるペスト菌、結核における結核菌、水虫における白癬菌というように特定の菌が存在する訳ではなく、歯周病の原因は「様々な雑菌による混合感染(複合感染)」ということになります。でも、歯周病における、それらの「病原体」は、口腔に当たり前に棲んでいる「常在菌」であり、口腔を無菌にすることは出来ません。歯周病は「病原体に感染して起こる」通常の感染症とは異なり「常在菌」による内因感染症なのですから、歯周病菌と宿主(菌が棲み処としている人間)との相互関係・環境によって発症するかどうかが決まることになります(外界からの菌感染で発病する訳ではなく、体内に棲む菌によって病気が起こる)。歯周病には「環境因子」「宿主因子(身体反応、生体因子)」など、多くの要素が複雑に関係していると考えられ、その全容の解明には、まだまだ時間が掛かると思われます(「難治性歯周病」のように、治療しても改善が見られない歯周病の存在は、その証でもあると思います)。

 一般的に流布されている「科学」「医学」は「主流説」ではあっても、それは決して「間違いのない事実」ではなく、まだまだ分かっていないこと、説明できないことが多いのです。「科学」は「事実を説明しようという試み」と、その活用であり「説明された事実から何を汲み取るか」が大事なのだと思います。私は「ここに書いてあることが正しいことだ」というつもりはありません。何かを絶対視するのではなく、多くの事実から現実を広く見ていければと考えています。

 また、東洋医学的には歯周病は「瘀血(おけつ=血液の滞り・血液循環障害)」と考えられており、駆瘀血剤に分類される漢方薬の中から、体質に合った薬剤が処方されます(「漢方薬うがい薬」を用いる所もあります)。西洋医学的な歯科では「歯ぐきを傷つけるような歯ブラシの使い方」は誤りとされていますが、東洋医学では針などを刺して古い血、悪い血を出す「瀉血法(しゃけつほう)」にも効果があるとされています。私自身は、ある程度は歯磨きで血を出すのはアリだと思います(「乱暴な磨き方だから血が出る」のは論外です)。歯肉を傷つけることは歯周病菌が血液中に入り込む危険性はありますが、歯周病の治療には、ある程度、必要ではないかと思います(出血すると損傷部位を修復するための細胞が集まってきますので治癒効果も上がると考えられます)。もちろん「クレフト(歯の付け根の歯肉の縁がえぐれるように深くなり、歯根面が露出する症状)」や「フェストゥーン(歯肉の土手が輪状に肥厚する症状。手にできる「タコ」のようなもの)」という歯肉異常や細菌感染起こすことも有り得ますので無茶は禁物です(「クレフト」も「フェストゥーン」も「咬合力」が原因となることもあるようなので見極めは難しいところですが、力任せのブラッシングは禁物でしょう。歯ブラシは「やわからめ」か「ふつう」を使うのが良いでしょう)。

 歯周病を進行させやすい要素は歯並びなど色々ありますが、専門的なことは歯科医に任せるとして(歯並びが悪いと歯磨きが行き届きにくい)、自分自身で出来る生活改善としては「ブラッシング不足、喫煙、不規則な生活・ストレス、口呼吸、薬」などが挙げられますので、これらに注意するようにして下さい。

 ブラッシング不足……歯周病に直接関与する「歯肉縁下プラーク」を除去する「歯周ポケット内の清掃」はもちろんですが、歯周ポケットにフタをする「歯肉縁上プラーク」は酸素を嫌う歯周病菌にとっては防護壁のようなものなので除去が必要です。

 喫煙……タバコを吸うと、酸素と結びつくはずの赤血球が、酸素よりも結びつきやすい一酸化炭素と結びついてしまうため、血中酸素分圧が下がります。これは酸素を嫌う歯周病菌にとっては好条件ですし、ニコチンはコラーゲンを作る働きがある線維牙細胞の活動を抑制するので歯根膜の修復が遅れてしまいます(コラーゲンを作る働きが抑制されるのですから肌にも良くない訳です)。他にも、免疫細胞の遊走(移動)を抑制したり、ヤニが付くことでプラークを付着しやすくしたり、血管が収縮して血行が悪くなり、修復が遅れることなども原因となります。

 不規則な生活・ストレス……全身疾患の原因ともなり、体内の状態を悪化させますので、体内と密接な関係にある歯周病をも進行させる要因となります。

 口呼吸……口呼吸は口内を乾燥させるので、唾液による自浄作用・修復作用・粘膜保護作用が失われますし、唾液中の抗菌成分「リゾチーム」「ラクトフェリン」などが供給されないことなどから、歯周病は悪化しやすくなります(口腔乾燥症〔ドライマウス〕になると、虫歯や歯周病などの歯科疾患は悪化しやすくなります。水分は体内での化学反応に必要なものなので、乾燥すると菌感染に弱くなります。冬に喉などの粘膜が乾燥すると、風邪やインフルエンザになりやすくなりますよね)。よく「舌を見れば健康状態がわかる」と言われますが、唾液の量・組成変化によって一時的な細菌状態の変化が起こり、舌表面の組織「糸状乳頭」が角化、肥厚して、残渣(食べ物カス)や老廃物、細菌の死骸などを付着(舌苔)させることが要因のようです。

 薬……抗アレルギー薬、抗うつ薬、降圧剤などの薬には唾液分泌量が少なくなる副作用があります(唾液分泌量が少なくなることで歯周病が悪くなる理由は「口呼吸」の項を参照)。

 ちなみに、歯周病専門医は「日本歯周病学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp2/index-j.html」で探すことが出来ます(リンククッションが切れている場合はURLをコピペしてみて下さい)。

 歯周病は、決定的な治療法がなく、GTR法やエムドゲインなどの歯周組織再生療法も適用範囲が限られたり、効果が少なかったり、決定打になりうるものではありません。また、そのような外科的な歯周病治療では(抜歯を含む)、歯肉を傷つけることで、歯周病菌を血管内に送り込んでしまい(菌血症)、全身に散らばって一時的に全身的な疾患が悪くなってしまうことも有り得ます(歯石除去だけでも、ほぼ100%、菌血症が起こると言われます)。
 「次亜塩素酸」「強酸性水」「バイオ・イオ・ナース」「高周波治療(ジアテルミー)」を補助的に使った殺菌歯周病治療や、研究が進んでいる「オゾンナノバブル(ヒールオゾンとは関係ありません)」など、外科的な方法の欠点のない方法も生み出されてはいますが、抗菌剤や抗生物質、次亜塩素酸などによる「殺菌治療」は、常在細菌叢(定住している菌のバランス)を崩して様々な内因・外因感染症の原因になることも有り得るので「両刃の剣」とも言える方法だということを頭においておく必要があります。

 また、最近は「乳酸菌による歯磨き」や「LS1」という乳酸菌も注目されていますが、先に書いた通り、身体に棲む菌の割合が安定した成人では、外部からの菌の定着は難しいので「菌交代」が起こらない限り、これらの方法によって「歯周病を治す」のは難しいでしょう(持続的に使い続けることによる「歯周病抑制効果」なら期待できるかも知れませんが、根本的に細菌叢を変えるのは難しいでしょう。ヨーグルトなどの乳酸菌のように、一時的に変化させることが出来たとしても、人体に棲み続けることは出来ず、数日で排出されてしまうことも考えられると思います)。

 「治療法にケチばかりつけたら何にもできない」と思うかも知れませんが「科学」とは、常に批判の目にさらされて「客観性」「社会性」を獲得していくもので、別の主張があることを知ることは大切なことだと思います。研究者は自分の研究を「正しい」と考えて「研究している」のですが、それだけでは「科学」にはなりません。それを無条件に聞き入れることはカルトのようなもので、様々な研究者が様々な主張をしているのですから、その主張を「正しいもの」と考えると混乱してしまいます。多くの主張に耳を傾けることは面倒なことだと考えがちですが、1つの主張を「確実なものだ」と思い込むことは誰のためにもなりません。それが自分の受ける治療なら、なおさらです。

 初期のものはともかく、歯周病で損傷を受けた歯槽骨が元に戻ることはありません。歯周病が高度に重症化した歯では、他の歯への影響を避けるため抜歯することにすらなります(歯がなければ歯周病はなくなります)。成人での抜歯は虫歯によるものより歯周病の方が多いのです。ブラッシングを丁寧に行っても完全に歯周病を防ぐことはできないでしょう。だからこそ、最低限「ブラッシングに時間をかける」ことぐらいはしなければなりません。自分で出来る「ブラッシング」に手を掛けることなく、歯科医院に「最高の治療」を求めることは出来ないですからね(歯周病には「活動期」と「休止期」があるので、少し良くなったように見えても油断せずに丁寧なブラッシングを続けることが肝心です)。
 歯周病菌は、歯周ポケット内の含硫アミノ酸(硫黄を含んだアミノ酸)であるシステインやメチオニンを分解して、口臭の原因となる「揮発性硫黄化合物」を産生します。この揮発性硫黄化合物には毒性があるので、このニオイ物質そのものが「歯周病悪化」させるので、口臭予防のためにも「歯」だけでなく「歯と歯ぐきの間」のブラッシングを心がけたいものです。

------------------------------最後に------------------------------

 余談ですが、アメリカ帰りの歯科医が「日本の歯科は遅れている!」と主張していることがありますが、私は同意できません。
 確かに、日本の歯科医のほとんどは「保険医」であり、患者の側も保険治療を希望しているので、歯科医は「決められた保険治療だけを行っていればいい」ことになります。決められたことだけしていればいい訳ですから、新しい知識・技術を学ぶ必要に迫られることもなく、アメリカの歯科医に遅れをとりやすい土壌があることは否めません。でも、それだけで「日本が遅れている」とは言えない事情があると思うのです。

 そもそも、アメリカは、日本のように国民皆保険制度ではなく、各人が民間の保険会社を選び、予算などに合わせて保険を選びます。そのため、無保険者数は多く(6人に1人が無保険者のようです。当然、保険は使えません)、保険に加入していても、保険会社の契約医の治療しか受けられなかったり、プランに応じて保険会社が「適当」と認めた治療しか受けられないなど、保険会社による制約が厳しくなっています(治療費が高額になるため、アメリカでは健康管理としてフィットネスやサプリメントが好まれるのだと言われます)。そのため、アメリカにも日本の医療制度を高く評価している人達もいますし、現に、クリントン政権は国民皆保険制度を導入しようとしました(導入には失敗しました。現オバマ政権は安い公的保険の導入を検討しているようです)。
 つまり、アメリカの医療は「高所得者は最高の治療を受けられるが、低所得者は治療が受けられない。もしくは、最低の治療しか受けられない」ということで、上下の格差が大きいのです。当然、最高の治療を望めば、天井知らずの治療を受けられるでしょう(アメリカの保険事情についてはマイケル・ムーア監督の「SiCKO」を見ると良いでしょう。ドラマ「ER」でもアメリカでの保険事情を垣間見ることができます)。
 確かに、日本での保険診療は「必要最低限の健康状態」にするためのもので、それ以上の「良い状態(審美目的を含む)」にする治療や「予防」には認められていないので、それ以上の治療を行っているアメリカで歯科を学んできた人達にしてみれば、日本での「保険治療の一般的水準」を見れば「遅れている」と映ることでしょう。
 でも、自由に保険を選んで加入しているアメリカ国民と違い、日本国民は義務として保険料を支払っている訳ですから、日本国民は治療を安く受ける権利があります。その保険で受けられる治療水準が低いというのなら、それは「日本の歯科医レベルの問題」ではなく「制度の問題(部分的、或いは全体的な)」として語られるべきことだと思います(「保険医療を良くしよう」というなら理解できます)。
 保険制度は「完璧な治療」を認めません。財源が足りないからです。保険制度では各々の治療に点数が決められていて、定められた形式に沿った治療が行われ、どこでも同じ料金を支払うだけで済むようになっています。でも、歯科医側としては自由に金額を決められないということなので、定められた報酬の中から利益を上げなければなりません。現時点で、日本の歯科医は利益の少ない治療を行いながら、数をこなすことで利益を得ようとしているのですから、どうしても手をかけた治療を行うことが出来ません(そんな環境の中でも、真摯に取り組んでおられる歯科医はおられます)。我々が保険治療に期待できるのは「完璧な治療」ではなく「良心的な治療」なのです(但し、患者の考える「良心的」と、歯科医側の考える「良心的」にズレがある可能性は少なくないでしょう。また、上質の治療を求めるなら自費診療を依頼しなければならないということです)。

 日本の国民は、自費診療による高度な歯科医療の価値を知りません。そのため、判断基準は金額が全てです。金額だけを判断基準にするなら、安い方がいいに決まっています。
 人によって「何に、どれだけのお金をかけるか」というのは違うのは当然で「これぐらいなら歯科にお金をかけられる」と感じる額も当然違います。「安い方がいい」と考えている日本国民と、歯にステータスを感じるアメリカの高所得者層が歯科にお金をつぎ込むのとは訳が違うと思います(ステータスであるからこそ、アメリカで受けられる治療の格差も大きいのだと思います。日本では矯正治療の際、金具が見えないように歯の裏側に装着する傾向にありますが、アメリカでは矯正器具を隠していませんよね。子音が大事な言語圏では、母音が大事な日本語と違い、歯と舌を使って発音する「s」や「z」などの子音「歯音」を明瞭にする意味でも歯並びが重視されるのかも知れません。ちなみに、指しゃぶりが長期化すると、日本語でも歯と舌を使って発音する「サ・タ・ナ・ラ行」の発音に影響が出るとされます。指しゃぶりは無理にやめさせるのではなく、野外での運動などによって自然にやめさせる方向にするのが望ましいです。早期の離乳は指しゃぶりの原因になりうるので、半年以内の離乳は避けて下さい)。これは、歯科医を育てる風土が育っていないということで「日本の歯科水準」の原因を歯科医に求めるのは酷だと思うのです。

 現在、日本では、歯科医院はコンビニエンスストアの1.5倍以上もあり(2004年2月16日:読売新聞)、非常に競争が激しくなっています。おまけに、保険診療の報酬は少なく、出来高払いになっているため、お金儲けのための治療になりがちです(日本では「出来高払い」なので「短時間・簡単な治療=安価」という「対価」の図式で考えますが、スウェーデンでは「1人あたり」の人数で治療費が決まる「人頭払い」であるなど、社会の仕組みを抜きにして日本と諸外国との単純な比較はできません)。歯や神経を保全するより抜歯・抜髄する方が利益が上がるような日本の保険制度は、改善する必要はありますが(儲け主義の歯科は、すぐに抜歯したがります)、日米の医療水準の差は社会(制度など)との関わりの中で生まれた、低負担と引替えの「一般水準」と言えるもので、日本以上の医療保障・治療水準のスウェーデンと比較して「日本の歯科は遅れている」というならともかく、アメリカのように格差の大きい国の「高い水準の治療」と比較するのはフェアではないと思います(コストパフォーマンスの比較なら、日本の方が優れているかも知れません。アメリカでの治療費が日本での治療費の5~10倍であることは少なくないようです)。日本の保険による歯科治療が、歯科医の身を削るような仕組みになっていて、歯科医も患者もギリギリのところにいることを無視して「日本の歯科は遅れている」というのは、いかがなものでしょうか?。「日本の歯科は遅れている」と言いたいなら、日本のような安価な治療を可能にしてからにして欲しいものです。

 保険診療の「混合診療(保険外併用医療)禁止」の問題にも触れておきます。診療は、大きく「保険診療」と「自費診療」に分けられるのですが、保険診療なら保険診療のみ、自費診療なら自費診療のみで治療しなければならないということです(厚生労働大臣の定める「選定療養」などを除く)。
 例えば、銀歯には保険が利くのですが、金歯やセラミック冠には保険が利きません。ですから、銀歯にするなら、その歯にかかる治療は保険が適用されますが、保険の利かない金歯やセラミック冠にする場合は、被せ物以外の治療(本来は保険が適用される切削などの必要不可欠な治療)も全て自費診療(全額負担)になってしまうため、治療費が高額になってしまうと言われています(保険診療で切削を行い、自費診療で被せ物を選ぶことは出来ず、切削を保険で行う場合は保険が適用される被せ物を選ぶしかないということ)。
 でも、これは誤解のようで、医科の分野と違って、混合診療が認められていた「歯科」の分野に対して1976年に出された「混合診療原則禁止」の通知(「51年通知」とも呼ばれます。ちなみに「混合診療」は通知によって原則禁止されたのみで明文化された法律はないようです。以上、括弧内は管理人による注意文)の中でも「一定の段階まで保険で治療してから『自費治療へ移行する』」ことは認められていて「保険外併用医療」として、保険診療で切削を行った後、クラウンやインレー、ブリッジや入れ歯など「補綴(ほてつ)」の段階から自費診療へ移行することが可能なようです(参考:2009年4月19日・読売新聞「医療のことば『歯科の治療』」。その病名、その歯に限った措置なので、他の歯は保険のまま治療が受けられますし「虫歯治療は自費、歯周病治療は保険」ということも可能です)。但し、自費診療にかかる費用は歯科医院によって全く異なるので、受けたい自費診療がある場合、どの程度の費用がかかるのか予め訊いておくことが大切だと思います(保険と自費の「差額診療」は認められておらず、保険診療なら数千円で受けられる治療が数十万円になることもあるようです。最近は歯科治療をコーディネートしてくれる「デンタルコーディネーター」という職業もあるようです)。51年通知については熟知していない歯科医も多いようなので、疑問があれば訊ねてみると良いと思います。

 整体などの手技療法でも歯科医でも医師でも、新しい方法を模索する臨床家は、どの分野でも同じだと思いますが、その多くは成功例しか紹介しません。
 成功例については「成功した理由」をいくつか挙げることは出来るでしょう。それは「(成功に必要だった)限られた理由」の中からピックアップすれば良いだけです。でも「失敗した理由」というのは、数え切れないほどの無数の要因の中から理由を見出さなければなりません。それは漠然としている「分からないこと」の中から理由を見出していく作業です(分からないから成功できなかったのです)。それは骨の折れる、途方に暮れてしまう作業なので、多くの場合、放置します。そして、臨床家たちは「成功例」を突き詰めていくのです。
 失敗例の研究は大変なので、成功例を研究することで「成功に必要なこと」を見出そうとするのです。だから成功例だけを相手にして、失敗例は放置するのです(「治らなかった人」は来院しなくなりますので相手に出来なくなるでしょうし)。「失敗した」「出来なかった」という事実を前に、落胆しながら骨の折れる作業をするより、成功例を元に研究(仕事)していく方が楽しいですからね。
 そもそも「成功した対象」と「失敗した対象」の身体が根本的に違うかも知れないのに「成功例」を突き詰めていけば「失敗例は減らせるはずだ」と考えているのだと思います。臨床家自身が成功例だけを相手にしているから、臨床家は成功例の裏にある失敗例を表に出すことはないのだと思います。

 「咬み合わせ治療で、こんな症状が治った」「歯科金属の除去で、こんな症状が治った」といった話を、よく聞きます。でも、その裏にいる「治らなかった人」の話を聞くことはありません。そして「治らなかった人」「良くならなかった人」は「だまされた」と言うのですが、ほとんどの場合(全部とは言いません)、「だましてやろう」と考えていた訳ではなく、臨床家とは「成功例だけを相手にしていたい生き物」なのだと思います。だからこそ、治療や施術を受けようとする側は、いろいろと検討してみる必要があると思います。
 成功する理由は「いくつか」だと思いますが、失敗する理由(うまくいかない理由)は無数にあると思います。だからこそ、私は不可逆的な(元に戻らない)治療をオススメしようとは思いません。失敗する理由(うまくいかない理由)が無数にあるということは、あなたが不可逆的な治療を受けた時、治らない理由が無数にあるかも知れないということだからです。
 ここまで、歯科について書いてきましたが、答えらしいものは何も書かなかったつもりです。断定的に言えることは何もないと思うからです。立場やスタンスによって(「何を重視するか」などの「評価」の方法や「何を学んできたか[学派・学閥の違い]」によって結論は全く異なります)、「明らかに」とか「証明されている」とか、断定的に仰る方もおられると思いますが、実際には様々な断定的主張があり、私が調べた限りでは、断定的に書けるほどハッキリしていることはないと感じました(これは、歯科・医科に限らず、様々な方面で言えることだと思いますが「明らかに」とか「証明されている」という言葉が軽く使われている気がします。自分が学んできた「『学派・流派』『学閥』こそが正しい」という思いは理解できるのですが「他の主張もある」ということを周知しなければ、治療・施術を受ける側は混乱してしまうと思います)。

 最近は「根拠に基づいた医療(EBM)」という言葉を聞くことが多くなってきています。「エビデンス(臨床結果)」を重視することは、学問的裏づけよりも統計的な結果を重視することで、「理屈は分からなくても結果が出ていれば治療行為とみなす」ということです。
 多くの場合、臨床家たちは、何らかの方法によって得られた「結果」を通して「原因」を推測し、その方法を通して得られる「結果」が高確率で良好である場合、それを根拠(エビデンス)にして「明らかだ」「証明された」などと自説の正しさを主張します。でも、それは「テクニック」や、何らかの「方法」を通して得られた結果に過ぎず、ある症状が「起こった過程」を逆にたどることによって改善させる(元に戻す)訳ではないのですから「治効機序(作用機序)」と「発生機序」は別だということだと思います。つまり「効果がある」からと言って、その方法を支える理論をもって「発生メカニズムを解き明かした」ということにはならないということです(「理論」は人間の「発想」を超えることはない上、その証明には「技術」の制約を受けます。「現実」は理論によりも深いものだと思います)。これは施術を受ける側も臨床家側も認識しておかなければならないことだと思います(一口に「エビデンス」と言いますが、エビデンスには信頼度によって分類される「エビデンス・レベル」というものがあり、臨床家個人が得た結果・主張などはエビデンスとして最低レベルであり、学会などで発表された論文でもエビデンス・レベルはピンキリだということを覚えておいて下さい。それでも臨床家たちは、それらのデータを基に「間違いない」と主張することも多いので、そのあたりを考慮して聞く必要があります。もちろん「エビデンス・レベルが低い=間違っている」という意味ではありません)。

 ここに書かれていることは、基本的に、私が学んだり調べたことを、自分の身体観に基づいてまとめたものです。同じような考え方をする歯科医や整体師が他にいる可能性を否定はしませんが、ここに書かれていることを特定の個人・団体から学んだことはありません(整体技術の考え方・施術は師に学びましたが、歯科に関して学問的なことを師から学んだことはありません)。ですから、ここに書かれていることを前提とした希望を全て満たしてくれる歯科医(整体技術に関しては整体師)はいないと考えて下さい。つまり、ここに書かれていることを前提とした希望を満たしてくれるであろう歯科医(整体技術に関しては整体師)はいないので「どこかで妥協しなければならないだろう」ということです(整体技術に関しても、私に期待されても困ります。私はヘタレです!。爆)。
 ここに書かれていることが正しいことだと言うつもりはありません。厳密に言えば間違っている箇所もあろうかと思いますが、歯科に馴染みのない人でも「歯科の全体像の俯瞰」が容易であることを大事にして書いたつもりです(歯科に詳しくない私の勉強を兼ねた記事でもありますし。笑)。歯科にかかる「患者」として、ある程度は身を守る知識が必要であり、歯科に馴染みのない人が抱く「歯科治療に関する疑問」を解くヒント、歯科治療を受ける判断・考え方の1つ、読まれた方の「調べ物」の参考になるのではないかと思います。

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 このブログの内容は、将来、私自身(兵庫県在住)が兵庫県内に開業予定の整体院のホムペに掲載する予定です。この記事に関しては、今後も少しずつ加筆・修正する可能性が特に高いです。盗用や、この記事を他の人に紹介することなどは御遠慮下さい。

 いや~、畑違いの記事を書くのは大変でした!。こういう学問的な記事は書きたくありませんね!(笑。いくら調べてもキリがなかった!)。歯科の分野は、私の印象では、一般向けに詳細に書かれたものは少なく、なかなか疑問を解いてくれるもの、全体像を俯瞰できるように体系的に書かれたものは少ないと思います。そのため、各論を突き合わせて総論をまとめ、それを体系的に書くのは難しかったです(かなり前に、頭の中では総論は出来上がっていたのですが、それを体系的に書くのが難しかったです。納得いかない資料も多くて調べるのも大変でした)。書きたいことを全部書こうとすると、すごく難しい……「編集」の難しさを実感しました……。でも、書いて良かったのは「整体向きの意識」に気づけたこと…突き詰めて、追い込まれて書いてるうちに10代の頃の意識に近いものが戻ってきました…もっとギリギリのところでやらなきゃいけないな…少しレベルアップできたと思います…(笑)。

 ※……「記事中の○○を紹介して欲しい」というような書き込みは御遠慮下さい。また、歯科医ではありませんので個別の相談などには応じかねます。

 後日、画像を入れておきます(いつのことやら)

 次回の更新の予定は今のところ全くありません(爆)。何か思いついたら書くかも知れません。
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  1. 2009/08/08(土) 02:38:51|
  2. 身体・健康
  3. | コメント:1
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